選択的夫婦別姓問題についての雑記

法学部
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先日(2020年12月15日),政府の第5次男女共同参画基本計画案の改定案を自民党が了承したという報道がありました。焦点はいわゆる選択的夫婦別姓問題に関する記述で,原案の「対応を進める」から「更なる検討を進める」に変更となったようです。

自民党の夫婦別姓反対派の意見を受けて,表現が後退したようです。

「検討」をしてから実際の「対応」をするわけですから,表現が後退したという評価で間違いなさそうです。

自民党は保守政党ですから,こういう動きがあったり,反対派議員がいること自体には驚きはないですが,どうなんでしょうかね。私には定見があるわけではないですが,「反対」の意見の人は少なくなりつつあるのではないでしょうか(参照:内閣府の世論調査)。

夫婦の名字と法律

夫婦の名字については,民法750条に規定があります。

(夫婦の氏)
第七百五十条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

民法

法律(民法)では,名字のことを「」と言います。「氏」=「うじ」と読みます。

夫婦別姓に関する法務省のウェブサイトでも「選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について」としており,夫婦別氏を正式名称としており,夫婦別姓には「いわゆる」がついています。
こちらも「別氏」=「べつうじ」と読みます。

上記の現在(2020年12月)の民法をみると,夫婦は結婚する際に,夫の氏(名字)か妻の氏(名字)を選択することになり,その選択に従って,夫婦は同じ氏(名字)を名乗ることになります。
いわば,「選択的夫婦同氏(選択的夫婦同姓)制度」ですね。

ちなみに戦前は,家族関係は「家制度」でしたから,その「家」に所属するものは同じ氏を名乗るものとされ(「戸主及ヒ家族ハ其家ノ氏ヲ称ス」(旧746条)),妻は結婚すると夫の家に入ることとされていたので(「妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル」(旧788条1項)),妻は夫の氏を名乗ることとされていました。
それが戦後,憲法の男女平等原則を受けて,現在の民法の規定のかたちに改正されました。

夫婦の名字(氏)についての選択肢

日本では,現在は「選択的夫婦同氏(選択的夫婦同姓)」であり,それを「選択的夫婦別氏(選択的夫婦同姓)」にしようという改正の動きが何年も前からくすぶっているという状況です。

夫婦の名字(氏)について,この2つの制度以外に他の選択肢はないのでしょうか。実際に日本で採用することは難しいかもしれませんが他にも選択肢をとっている諸外国も多いです

一つは,夫婦別氏を原則とするという選択肢です。
たとえば,韓国は父系血縁社会と言われ,父系の血縁を非常に大切にします。おそらく儒教の影響ではないかと思われます。ですので,結婚しても父系の氏を名乗り続けることが基本です。
国際的な流れとしては,個人の尊重や男女平等という視点から別姓を進める方向に動いていると思いますが,韓国の場合は,夫婦別姓ではありますが,父系家族を重視するという視点からの別姓制度と言えるでしょうか。

他には,結合氏という制度です。「結合氏」=「けつごううじ」と読みます。
日本ではなじみがない制度ではありますが,諸外国ではわりとよくある制度です。夫婦の名字(氏)を両方くっつけてしまうという方法です。

これら,同氏(同性)別氏(別姓)結合氏とそれを選択的とするか強制とするかを組み合わせることになります。ひょっとしたら,さらに別の選択肢もあるのかもしれません。

本記事で参考にした文献

本記事を書くにあたって,下記の文献を大いに参考にさせていただきました。下記の文献にはもっと詳しく解説されていますので,気になる方は読んでみてください。

新注釈民法(17)親族(1)
二宮周平・編/大村敦志,道垣内弘人,山本敬三・編集代表(2017年・有斐閣)

こちらの本の750条の解説に詳しく書かれています(執筆者は床谷文雄先生)

諸外国の制度についてもかなりたくさん紹介してくれていますので,この問題を考えるうえでとても参考になると思います。というか必読文献です。

夫婦別姓を認めていない現行制度についての最高裁判断