夫婦別姓訴訟,最高裁大法廷が2021年6月23日に判断

夫婦別姓訴訟,最高裁大法廷が2021年6月23日に判断 法学部
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夫婦同姓を定めた民法と戸籍法の規定が憲法に反するとして,事実婚の男女がおこした3件の家事審判・特別抗告審について,最高裁判所大法廷は2021年6月23日に決定を示すと決めたようです。

夫婦別姓についての最高裁の憲法判断はこれで2度目です。

1度目は最高裁平成27年(2015年)12月16日判決・民集69巻8号2586頁です。

平成27年最高裁判決は,夫婦同姓は合憲と判断しました。

この判決から6年弱しか経っていませんが,最高裁は新たな判断をするのでしょうか?

注目ですね。

最高裁大法廷の判断が出る前に,夫婦同姓を定めた条文や平成27年判決などをあらためてみてみましょう。

選択的夫婦別姓制度については,下記記事で雑感を書いたりしてますので,よかったらみてみてください。

夫婦同姓の条文

夫婦同姓(夫婦同氏)について定めている条文は民法750条です。と戸籍法74条です。

民法

 (夫婦の氏)
第750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。

また,戸籍法74条には下記のような規定があります。

戸籍法

第74条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
 一 夫婦が称する氏
 二 その他法務省令で定める事項

今回の家事審判・特別抗告では,上記の2つの条文がいずれも憲法に違反していると主張されています。
問題となる憲法の条文は14条(法の下の平等)24条(両性の本質的平等)あたりだと思います。

夫婦別姓訴訟・平成27年(2015年)最高裁判決

最高裁が夫婦同姓(夫婦同氏)制度の合憲性について判断した平成27年(2015年)判決では,下記のような判断が示されました(最高裁平成27年12月16日判決・民集69巻8号2586頁)。

  • 1 民法750条は,憲法13条に違反しない。
  • 2 民法750条は,憲法14条1項に違反しない。
  • 3 民法750条は,憲法24条に違反しない。
  • 4 3について,反対意見(山浦善樹),補足意見(寺田逸郎),意見(櫻井龍子,岡部喜代子,鬼丸かおる,木内道祥)がある。

反対意見:判決に反対するもの
補足意見:判決に賛成し,理由付けに追加・補足をするもの
意見:判決に賛成するものの,理由付けが異なるもの

夫婦の氏と立法裁量

平成27年最高裁判決は,夫婦の氏制度について,以下のように判断し,一定の立法裁量があるとしています。

姻及び家族に関する事項は,関連する法制度においてその具体的内容が定められていくものであることから,当該法制度の制度設計が重要な意味を持つものであるところ,憲法24条2項は,具体的な制度の構築を第一次的には国会の合理的な立法裁量に委ねるとともに,その立法に当たっては,同条1項も前提としっつ,個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚すべきであるとする要請,指針を示すことによって,その裁量の限界を画したものといえる。

最高裁平成27年(2015年)12月16日判決・民集69巻8号2586頁(2592-2593頁)

国の立法裁量を認めつつ,憲法24条2項は裁量の限界を示したものであるとしています。

また,立法に当たっての考慮要素として下記を示しています。

姻及び家族に関する事項は,国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ,それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断によって定められるべきものである。特に,憲法上直接保障された権利とまではいえない人格的利益や実質的平等は,その内容として多様なものが考えられ,それらの実現の在り方は,その時々における社会的条件,国民生活の状況,家族の在り方等との関係において決められるべきものである。

最高裁平成27年(2015年)12月16日判決・民集69巻8号2586頁(2593頁)

国の伝統」や「国民感情」を含めた社会情勢を踏まえつつ,「総合的な判断」によって定めるべき,としています。

夫婦同姓(同氏)と憲法24条についての平成27年最高裁判決の判断内容

上記のような判断を示したうえで,平成27年最高裁判決は夫婦同姓(同氏)について,下記のような評価をしています。

  • 〔性(氏)の変更により〕いわゆるアイデンティ ティの喪失感を抱いたり,婚姻前の氏を使用する中で形成してきた個人の社会的な信用,評価,名誉感情等を維持することが困難になったりするなどの不利益を受ける場合があることは否定できない
  • 夫の氏を選択する夫婦が圧倒的多数を占めている現状からすれば,妻となる女性が上記の不利益を受ける場合が多い状況が生じているものと推認できる。
  • これらの不利益を受けることを避けるために,あえて婚姻をしないという選択をする者が存在することもうかがわれる。

最高裁としても,夫婦同姓(同氏)によって,さまざまな不利益が生じることを認めています

この論調だと,違憲判断が出そうですよね?

しかし,下記のような理由で,平成27年判決では,夫婦同姓(同氏)は憲法24条に違反しないと結論付けました。

同氏制は,婚姻前の氏を通称として使用することまで許さないというものではなく,近時,婚姻前の氏を通称として使用することが社会的に広まっているところ,上記の不利益は,このような氏の通称使用が広まることにより一定程度は緩和され得るものである。
 ……以上の点を総合的に考慮すると,本件規定の採用した夫婦同氏制が,夫婦が別の氏を称することを認めないものであるとしても,上記のような状況の下で直ちに個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠く制度であるとは認めることはできない。したがって,本件規定〔民法750条――筆者注〕は憲法24条に違反するものではない。

最高裁平成27年(2015年)12月16日判決・民集69巻8号2586頁(2595頁)

ざっくり言うと,社会生活上,ひろく通称使用(旧姓の使用)が認められているから,違憲とまでは言えないよ,ということでしょうか。

令和3年(2021年)夫婦別姓訴訟――最高裁判断の注目点

氏の制度について,国に立法裁量があるとした点はおそらく変更されないと思います。

とすると,この6年弱で社会情勢(平成27年判決にいうところの「国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因」)に大きな変化があったと最高裁が判断するか否か,また,その変化によって,夫婦同姓(同氏)が憲法24条違反となったか否か,について,どう判断するのかが注目ポイントではないかと思います。

また,やや本筋から外れますが,平成27年当時は最高裁の女性裁判官は3名でしたが,現在(2021年6月)は2名です。

この点も,多数意見の形成に影響があるかもしれません。

平成27年判決で,女性裁判官3名全員(岡部喜代子,櫻井龍子,鬼丸かおる)は,「民法750条は憲法24条違反であるとしています。

「意見」となっているのは,違憲ではあるが,国会の立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは言えないので,訴訟の結論としては,法廷意見(多数意見)と同じである,という意味です。

おなじく,木内道祥判事も,夫婦同姓(同氏)制度は憲法24条違反ではあるが,国家賠償法1条1項の適用上,違法となる立法不作為はないとしています。

山浦善樹判事は,夫婦同姓(同氏)制度は憲法24条違反であり,立法措置を取らなかった国には,国家賠償法1条1項の適用上,違法があると認められる,として反対意見を書いています。

平成27年判決当時においても,民法750条の合憲性についてだけみれば,5名の判事が違憲であるとしています。

2021年6月23日に最高裁大法廷がどのような判断をするのか注目ですね。

追記:合憲判断がでました!