育児介護休業法の令和3年改正が成立――男性でも産休?

育児介護休業法の令和3年改正が成立――男性でも産休? 法学部
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令和3年(2021年)6月3日に育児介護休業法の改正法が成立しました。

本改正法の法律番号は令和3年法律第58号です。

改正法の正式名称は『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律』です。

上記の改正法の名称からわかる通り,育児介護休業法の正式名称は『育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律』です。長いですねー。別に法律の題名で含まれる規律内容をきっちりとすべて示さなくてもよいと思うのですが,最近はこの形式の題名ばかりですね。「等」を使ったりとか。

令和3年改正育児介護休業法の概要

育児介護休業法の令和3年改正の内容については,おおむね以下の通りです。

  • 子の出生直後における男性の育児休業制度の新設
  • 育児休業制度の利用促進のための使用者の労働者への周知義務等
  • 育児休業の分割取得
  • 大企業(労働者1000人以上)への育児休業取得状況の公表義務付け
  • 有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和

また,この育児介護休業法の改正とともに,雇用保険法の育児休業給付についての規定が改正されています。

子の出生直後の育児休業制度の新設――男性の産休??男性版産休?

今回の育児介護休業法の改正で,従来の育児休業とは別に子の出生直後の育児休業が新設されました。

これが,報道などで「男性版産休」と言われているものです。

条文を見てみましょう。

 令和3年改正育児介護休業法

 (出生時育児休業の申出)
第9条の2 労働者は,その養育する子について,その事業主に申し出ることにより,出生時育児休業(育児休業のうち,この条から第9条の5までに定めるところにより,子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日まで(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては当該出生の日から当該出産予定日から起算して8週間を経過する日の翌日までとし,出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては当該出産予定日から当該出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までとする。次項第1号において同じ。)の期間内に4週間以内の期間を定めてする休業をいう。以下同じ。)をすることができる。ただし,期間を定めて雇用される者にあっては,その養育する子の出生の日(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては,当該出産予定日)から起算して8週間を経過する日の翌日から6月を経過する日までに,その労働契約が満了することが明らかでない者に限り,当該申出をすることができる。
 前項の規定にかかわらず,労働者は,その養育する子について次の各号のいずれかに該当する場合には,当該子については,同項の規定による申出をすることができない。
 一 当該子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までの期間(当該子を養育していない期間を除く。)内に2回の出生時育児休業(第4項に規定する出生時育児休業申出によりする出生時育児休業を除く。)をした場合
 二 当該子の出生の日(出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては,当該出産予定日)以後に出生時育児休業をする日数(出生時育児休業を開始する日から出生時育児休業を終了する日までの日数とする。第9条の5第6項第3号において同じ。)が28日に達している場合
 第1項の規定による申出(以下「出生時育児休業申出」という。)は,厚生労働省令で定めるところにより,その期間中は出生時育児休業をすることとする一の期間について,その初日(以下「出生時育児休業開始予定日」という。)及び末日(以下「出生時育児休業終了予定日」という。)とする日を明らかにして,しなければならない。
 第1項ただし書及び第2項(第2号を除く。)の規定は,期間を定めて雇用される者であって,その締結する労働契約の期間の末日を出生時育児休業終了予定日(第9条の4において準用する第7条第3項の規定により当該出生時育児休業終了予定日が変更された場合にあっては,その変更後の出生時育児休業終了予定日とされた日)とする出生時育児休業をしているものが,当該出生時育児休業に係る子について,当該労働契約の更新に伴い,当該更新後の労働契約の期間の初日を出生時育児休業開始予定日とする出生時育児休業申出をする場合には,これを適用しない。

この条文(1項)は「労働者は……出生時育児休業……をすることができる」となっており,性別を問うていません。

したがって,男性であっても取得可能な育児休業(出生時育児休業)です。
「男性であって」と書きましたが,通例であれば,出産する女性は,いわゆる産休産前産後休業)を取得するので,この制度を利用する女性はあまり想定されていないでしょうね。

産休産前産後休業)の根拠条文は労働基準法65条です。

労働基準法

 (産前産後)
第65条 使用者は,6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては,その者を就業させてはならない。
 使用者は,産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし,産後6週間を経過した女性が請求した場合において,その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは,差し支えない。
 使用者は,妊娠中の女性が請求した場合においては,他の軽易な業務に転換させなければならない。

この労働基準法65条は「出産する予定の女性が……」,「産後8週間を経過しない女性を……」,「産後6週間を経過した女性が……」,「妊娠中の女性が……」となっており,男性には適用がありません。

これまでは,男性が配偶者の出産直後に休もうとすると,従来からある育児休業制度しか選択肢がありませんでした。今回の改正で,育児休業ではなく,子の出生直後に限定して認められる「出生時育児休業」を選択できることになりました。

出生時育児休業制度の特徴

今回,新たに設けられた「出生時育児休業」ですが,最大の特徴は一定の要件を満たすと休業期間中の就業が認められる点ではないでしょうか。

従来からある育児休業では,休業期間中に就業することは認められていません。

しかし,「出生時育児休業」では,一定の要件を満たすと休業期間中でも就業可能です。要件は下記の通りです。

  • 労働者が就業可能な日数等の条件を使用者に申出
  • 使用者は,その条件の範囲内で候補日・時間を提示
  • 使用者からの提示に対して労働者が同意した範囲内で就業
  • 就業可能日等の上限(休業期間中の労働日・所定労働時間の半分)を厚生労働省令で定める。

根拠条文は育児介護休業法の令和3年改正後の9条の5第2項~4項です。

令和3年改正育児介護休業法

 (出生時育児休業期間等)
第9条の5 出生時育児休業申出をした労働者がその期間中は出生時育児休業をすることができる期間(以下「出生時育児休業期間」という。)は,出生時育児休業開始予定日とされた日(第9条の3第3項(同条第四項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)又は前条において準用する第7条第2項の規定による事業主の指定があった場合にあっては当該事業主の指定した日,前条において準用する第7条第1項の規定により出生時育児休業開始予定日が変更された場合にあってはその変更後の出生時育児休業開始予定日とされた日。以下この条において同じ。)から出生時育児休業終了予定日とされた日(前条において準用する第七条第三項の規定により当該出生時育児休業終了予定日が変更された場合にあっては,その変更後の出生時育児休業終了予定日とされた日。第6項において同じ。)までの間とする。
 出生時育児休業申出をした労働者(事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合,その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときはその労働者の過半数を代表する者との書面による協定で,出生時育児休業期間中に就業させることができるものとして定められた労働者に該当するものに限る。)は,当該出生時育児休業申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までの間,事業主に対し,当該出生時育児休業申出に係る出生時育児休業期間において就業することができる日その他の厚生労働省令で定める事項(以下この条において「就業可能日等」という。)を申し出ることができる。
 前項の規定による申出をした労働者は,当該申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までは,その事業主に申し出ることにより当該申出に係る就業可能日等を変更し,又は当該申出を撤回することができる。
 事業主は,労働者から第二項の規定による申出(前項の規定による変更の申出を含む。)があった場合には,当該申出に係る就業可能日等(前項の規定により就業可能日等が変更された場合にあっては,その変更後の就業可能日等)の範囲内で日時を提示し,厚生労働省令で定めるところにより,当該申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日の前日までに当該労働者の同意を得た場合に限り,厚生労働省令で定める範囲内で,当該労働者を当該日時に就業させることができる。
 前項の同意をした労働者は,当該同意の全部又は一部を撤回することができる。ただし,第2項の規定による申出に係る出生時育児休業開始予定日とされた日以後においては,厚生労働省令で定める特別の事情がある場合に限る。
 次の各号に掲げるいずれかの事情が生じた場合には,出生時育児休業期間は,第1項の規定にかかわらず,当該事情が生じた日(第4号に掲げる事情が生じた場合にあっては,その前日)に終了する。
 一 出生時育児休業終了予定日とされた日の前日までに,子の死亡その他の労働者が出生時育児休業申出に係る子を養育しないこととなった事由として厚生労働省令で定める事由が生じたこと。
 二 出生時育児休業終了予定日とされた日の前日までに,出生時育児休業申出に係る子の出生の日の翌日(出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては,当該出産予定日の翌日)から起算して8週間を経過したこと。
 三 出生時育児休業終了予定日とされた日の前日までに,出生時育児休業申出に係る子の出生の日(出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては,当該出産予定日)以後に出生時育児休業をする日数が28日に達したこと。
 四 出生時育児休業終了予定日とされた日までに,出生時育児休業申出をした労働者について,労働基準法第65条第1項若しくは第二項の規定により休業する期間,育児休業期間,第15条第1項に規定する介護休業期間又は新たな出生時育児休業期間が始まったこと。
 第8条第4項後段の規定は,前項第1号の厚生労働省令で定める事由が生じた場合について準用する。

せっかくの新制度ですから,この休業期間中の就業を悪用するような企業が出てこないことを祈ります。育児休業取得率が高いことをアピールしているが,内実は,休業中の就業を事実上強制して骨抜きにするというブラック企業が出てきそう……。

産休と育休(育児休業)?

産休と育休(育児休業),よく聞く言葉ではありますが,その違いを意識したことはありますか?

学生だと就業規則などを見る機会が少ないでしょうし,違いがわからない,同じものなんじゃないの?と思っている人も多いと思います。

学生であっても,小学校・中学校・高校と過ごす中で,女性の先生が出産のために休むということに接した経験もあると思います。だいたい出産予定日の1~2か月からお休みに入り,1年半から2年程度休むことが多いでしょうか。

この例の場合,通例は,産前6週間と産後8週間は産休(産前産後休業。労働基準法65条)で,産後8週間経過後から職場復帰までは育休(育児休業。育児介護休業法5条)です。

つまり,産休はまさに出産のための休業で,その趣旨から女性に限定されています。

それに対して,育休(育児休業)は,育児全般に対する休業ですので,男性でも取得可能です。子の出生直後からも取得できます

育児休業の分割取得

上記で,育児休業は男性でも取得可能で,子の出生直後から取得可能なのに,なぜ今回の改正で「出生時育児休業」が新設されたのでしょうか。

これまでは,子の出生直後に育児休業を取得した場合に限って,特別に再度の育児休業取得(分割取得)が認められていました(育児介護休業法5条2項←どうでもいいですが,読み方が複雑な条文です……)。

今回の「出生時育児休業」は,取得可能な期間内で,最大2回分割して取得することが可能となりました(育児介護休業法の令和3年改正後の9条の2第2項1号)。
より細かく期間を区切って取得することができるので,育児休業取得のハードルが下がったと言えそうです。加えて,上記の通り休業期間中の就業も一定の場合には可能なので,使用者にとっても,労働者にとっても使いやすい制度になっているのではないでしょうか。

また,従来からある育児休業も2回まで分割して取得することが可能になりました(育児介護休業法の令和3年改正後の5条2項)。
上記の通り,改正前は原則として分割不可で,出生直後に1回目の育児休業を取った場合に限って分割が認められていました。今回の改正で,育児休業の分割に制限がなくなったので(分割回数は2回まで),よりフレキシブルな使い方が可能になりました

有期雇用労働者の育児休業・介護休業の取得要件の緩和

改正前は,有期雇用労働者が育児休業・介護休業を取得するためには,2つの要件がありました。

  • 引き続き雇用された期間が1年以上
  • 子が1歳6か月に達する日までの間に契約が満了することが明らかでない
  • 介護休業開始予定日から93日を経過する日から6か月を経過する日までの間に労働契約が満了することが明らかでない

今回の改正で,一つ目の要件(引き続き雇用された期間が1年以上)が削除されました

こちらも取得要件が緩和され,取得促進となるのではないでしょうか。

とはいえ,有期雇用労働者は,いわゆる正社員とくらべると,雇用保障という面ではまだまだ弱い立場であることは否定できず,育児休業・介護休業の取得のハードルは高いといえるかもしれません。

まとめ

今回の改正では,新制度(出生時育児休業)が設けられたり,使用者の義務(周知義務や大企業の公表義務など)が定められたりと,企業の労務関係者にとっては大きな改正だと思います。

もちろん,労働者にとっても大きな改正です。

育児にせよ,介護にせよ,現状では休業を取得しようとすると,遠慮がちに申請するような風潮がありますが,堂々と気兼ねなく休業がとれる社会になるといいですね。