ある判決文に他の裁判所の判決文のコピペを疑われるような同一の誤字が発見されたとのこと。
ニュースでも取り上げられていたのでご存知の方も多いかもしれませんね。
発覚したきっかけは,生活保護費の基準額引き下げは憲法違反だとして,各地で提訴されている集団訴訟の地裁の判決文で,コピペが疑われる同一の誤字が見つかったことです。
その誤字は下記のものです。
- 誤:NHK受診料
- 正:NHK受信料
報道によると,今年(2021年)5月に出された福岡地裁の判決文で,上記の誤記があったようなのですが,その後に出された9月の京都地裁判決,11月の金沢地裁判決でも同一の誤記があったようです。ちなみに12月の神戸地裁の判決文は正確な表記だったようです。
原告側の弁護士さんは憤っているようですね。たしかにもし自分が当事者だったとしたら……と想像すると,コピペで敗訴すると門前払いをされているようで,あまりいい気はしないですね。
一方で,当事者でないとすると,地裁レベルの判断とは言え,あまりに判断がバラバラだと予測可能性がなくて困ってしまいますよね。
事実認定の部分は訴訟ごとに具体的な主張内容が異なるので,各裁判所で丁寧な認定が必要ですが,規範レベルは採用する解釈が異ならないならある程度同じような文言になってしまいますよね。
あれこれ書きましたが,微妙な事例かなーという印象です。ただ,仮に今回コピペがあったとしたならば,誤字を引き継いでしまうのはちょっと恥ずかしいですね。
(誤字がなければここまで話が大きくなることもなかったかなと思います)
最高裁は,判決理由の書き方に一般的な取り扱いを定めたものはないとして,とくに調査等は行わないようです。
ちなみに判決文は著作権の対象とはならないです(著作権法13条3号)。
著作権法(昭和45年法律第48号)
(権利の目的とならない著作物)
第13条 次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
一 憲法その他の法令
二 国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。以下同じ。)又は地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの
三 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に準ずる手続により行われるもの
四 前3号に掲げるものの翻訳物及び編集物で、国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が作成するもの