法学部に入学して,法学部の勉強方法や試験の受け方,試験の解答の仕方(答案の書き方),レポートの書き方が高校までと大きく異なり(というか,高校までの方法では上手くいかないことが多い),悩んでしまう人も多いと思います。
昔は「大学生なんだから自分でなんとかしろ」という風潮が強かったように思います。それゆえ,法学部での勉強の仕方や答案の書き方などは,先輩に頼ったり,学生の自治会などの相談会に参加したり,資格試験予備校・司法試験予備校(や予備校の刊行する本)に頼ったりすることが多かったです。
現在は,予備校の刊行物だけでなく,大学の先生が書いた法学部の勉強方法やレポートの書き方に関する教科書がたくさん出ています。
今回は,法学部の勉強の仕方,レポートの書き方,ノートの取り方,答案の書き方などに悩む人に向けたおすすめの教科書を紹介していきたいと思います!
ちなみに勉強の仕方やレポートの書き方・答案の書き方といった方法論ではなく,学問としての「法学」そのものの入門書は下記記事をご覧ください。
法学部の勉強の仕方に関するおすすめの教科書
『カフェパウゼで法学を――対話で見つける〈学び方〉』横田明美
法学部生の勉強の悩みに寄り添ったイチオシの教科書です。
法学部生の勉強の悩みに関する「あるある」が数多く収録されています。
イラストがたくさん使われており,また,会話調の記述も効果的に使われており,とてもよみやすいです。本当に研究室で勉強に関する相談をしているような感じで解説が進んでいきます。
構成としては,入学→2年生→3年生→4年生(進路)と,学生生活に沿ったものになっており,卒業まで手元に置いておくとなにかと参考になることが多いと思います。
法学部の新入生には是非とも読んでもらいたい1冊です。できれば入学直後は履修登録などでばたばたと読書する時間も取りづらい人もいると思いますが,5月のGW期間中に読んでおくとその後の勉強の効率が上がると思いますよ!
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『法学学習Q&A』横田明美・小谷昌子・堀田周吾
上記の『カフェパウゼで法学を』の横田明美先生も執筆者に入っている1冊です。
書かれている内容は『カフェパウゼで法学を』と大きく異なるというわけではないのですが,両書の違いは,以下の点でしょうか。
第1に,本書は共著です。執筆者の専門分野もそれぞれ行政法(横田明美先生),民法(小谷昌子先生),刑事訴訟法(堀田周吾先生)と分かれており,複数の視点からの解説を読むことができます。
第2に,構成が異なります。本書は「Part1 法学学習Q&A」,「Part2 法学学習の推し本」,「Part3 法学学習特別ゼミ」となっていますが,『カフェパウゼで法学を』学生生活の時系列ごとにまとめています。
いきなり両方とも買う必要はないと思いますが,自分の悩みに合う本,読みやすいと感じる構成の本を選び,必要になったらさらにもう1冊を買えばよいと思います。
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法学部のレポートの書き方や答案の書き方に関するおすすめの教科書
『リーガル・リサーチ&リポート――法学部の学び方 第2版』田髙寛貴・秋山靖浩・原田昌和
多くの法学部生は,3年生以降,なんらかのゼミに所属することになると思います。
そして,ゼミでは,報告義務があることが多いでしょう。報告の担当者になったはいいものの,なにを資料として用意すればいいのか,どう報告(プレゼン)すればいいのか,について悩む人も多いのではないでしょうか。
そんな人におすすめの1冊です。
本書は「第1編 法律学の表現と議論─リーガル・リポート」,「第2編 法律学の情報調査・収集─リーガル・リサーチ」の2部構成になっています。
レポートではなくリポートなっているのは,ゼミ等でのディスカッションや口頭報告の方法まで含んでいるからだそうです。
第1編の内容は法学部の論述試験の答案の書き方の参考になると思いますよ。
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『リーガル・リサーチ 第5版』指宿信・齊藤正彰/監修,いしかわまりこ・藤井康子・村井のり子/著
レポートを書くには,まずは調査や資料の収集が必要です。
本書はこの点に焦点を当てた1冊で,定番書といってよいのではないでしょうか。
とはいえ,ページ数も結構あるので,通読するというよりは,必要な箇所をつまみ読みするという使い方になると思います。ページ数は468ページもありますが,価格は安いので,1冊手元に置いておくとなにかと便利かもしれません。
『法を学ぶ人のための文章作法 第2版』井田良・佐渡島紗織・山野目章夫
上記の『リーガル・リサーチ』は,書く前の調査・資料収集に焦点を当てたものでしたが,本書は書くことに焦点を当てた1冊です。書き方に悩む人は多いのではないかと思います。大学入試などでも記述問題は苦手という人,結構多いですよね。
本書は,「Part1 文章というものを考える」,「Part2 明確な文章を書く」,「Part3 さあ,書いてみよう」の3部+INTRODUCTION,EPILOGUEという構成になっています。
法学分野での文章作成,答案の書き方についての実践的なアドバイスが数多く語られており,文章の組み立て方という大きな話から,(悩みがちな)接続詞の使い方などの細かな点についてまで丁寧に解説されています。
また,最後のEPILOGUEは必読です。EPILOGUEには「法律学を教える側からのメッセージ――採点者はどういう文章を読みたいか」というタイトルが付いています。採点者が着目する点が示されていますので,レポート・答案を書くにあたって,ここで示されている点を意識するのと,意識しないのとでは評価・点数が変わってくるかもしれませんよ。
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法学テキストの読み方に関する教科書
『法学テキストの読み方』大橋洋一
このブログでも法学の教科書(テキスト)をいろいろ紹介していますが,どう読んだらいいのかがわからない,種類が多すぎて選べない,と,法学の教科書についてのそもそもの疑問がある人も少なくないかもしれません。
高校までの教科書と比べて,抽象的な内容が多いし,複数の考え方が書かれていたり,そもそも正解のようなものが書かれていない,など法学の教科書(テキスト)に戸惑うこともあるでしょう。
本書では,このような疑問にQ&A方式で解説・回答してくれています。
Qの一例をあげると「インターネットで調べれば足りるから,教科書は買わなくてもいいですよね?」,「講義ではくわしいレジュメが配られるから,テキストはいらないですよね?」,「予備校本ではだめですか?」など,法学部に入学後に誰もが感じる疑問ではありますが,なかなか大学の先生に質問しづらい疑問について,丁寧に説明してくれています。
予備校本について,大学の先生がどういう印象を持っているのかなどは気になりますね。
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論述式試験の答案の書き方がわからない!そんなときは……
試験直前で焦っている人もいるかもしれませんね。
とにかく法学部の論述式試験の答案の書き方のモデルが知りたい!という人も多いかもしれません。
下記の記事に論述式試験の書き方についてもう少し詳しく紹介していますので,参考にしてみてください。
追記:2022年6月,研究者(大学の先生)による刑法の事例演習本がでました。本書の「第0講 刑法の事例問題への取り組み方」では,解答例を示しつつ,事例の分析方法や答案の書き方などの解説があります。取り上げる問題も,大学の定期試験でも頻出の分野を扱っている印象ですので,解答の「型」の習得だけでなく,刑法の試験前の追い込み勉強のための1冊としてもおすすめです。