経済法・競争法の本――ドラマ『競争の番人』をより楽しむために

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2022年7月よりドラマ『競争の番人』が放映開始になる予定です。

原作は新川帆立著『競争の番人』です。

新川帆立さんといえば,ベストセラーの『元彼の遺言状』の著者でもありますね。『元彼の遺言状』もドラマ化されていました。今一番勢いのある作家さんと言えそうです。

今回は,ドラマ『競争の番人』をより楽しむためのおすすめの本をいくつか取り上げたいと思います。

『競争の番人』の舞台

本作の舞台は公正取引委員会です。

法律に疎い人でも名前くらいはニュースなどで聞いたことがあるかもしれません。

市場の競争原理を阻害する行為を取り締まったり,大企業同士の合併などを監視・審査している機関(独立行政委員会)です。

主な所管法律は下記の2つです。

かつては(2009年9月以前),下記の2法に加え,「不当景品類及び不当表示防止法景品表示法)」も所管していましたが,消費者庁発足に伴い,同庁に移管されました。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和22年法律第54号)

独占禁止法と言った方が馴染みがあると思います。正式名称は結構長いんですね。

独占禁止法では,不公正な取引方法,市場独占を生じさせるような合併入札談合カルテルなどを取り締まっています。

不公正な取引方法は独占禁止法2条9項に定められているもののほか,「不公正な取引方法(昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号)」に定められており,これらは一般指定と呼ばれます。このほかに特定の業種に適用される特殊指定もあります。

下請代金支払遅延等防止法(昭和31年法律第120号)

下請法と呼ばれることが多いと思います。

ある仕事を遂行するのに,一定の事項を他の会社に依頼することがありますが,多くの場合は「発注側」と「受注側」が固定されており,発注側の企業規模が大きいことが多いと思われます。

それゆえ,交渉力に圧倒的な差が生じ,発注側は優越的な地位に立ちます。その優越性に乗じて受注側に過度な負担や不利益を負わせることがないように定められているのが下請法です。

建築などが想像しやすいと思います。
プロジェクト自体は大手ゼネコンが仕切り,実際の工事は小さな工務店などが担当する,ということを思い浮かべてもらえれば,両社の力関係がわかると思います。

経済法・競争法

独占禁止法を中心とする市場競争確保のための規律を,講学上の概念として「経済法」と読んだり,「競争法」と呼んだりします。

大学の講義では,「経済法」という名の講義になっていることが多いのではないでしょうか。

国家間の貿易関係の規律として「国際経済法」という分野がありますが,本記事で取り上げている経済法・競争法とはやや異なる分野(重なる部分もありますが)ですので,注意しましょう。国際経済法は貿易の自由化・WTO・FTAなどを取り扱います。

経済法・競争法の本――『競争の番人』をより楽しむために

『週刊ダイヤモンド』(2018年2月24日号)の第2特集を切り出し,電子書籍化したものです。

近年,公正取引委員会の活動が活発化してきており,企業法務としても経済法・独禁法への適切な対応が注目を集めています。なぜ公正取引委員会の活動が活発化したのか,従来の公正取引委員会とはどのような変化があったのか,に迫る記事です。

価格も安いので,ドラマ視聴前に目を通しておくと,ドラマをより楽しめるかもしれません。

気になることへの入り口として新書は定番ですね。岩波新書は一流の執筆者でそろえており,本書も信頼性も高い入門書となっています。経済法・競争法の根底に流れる考え方が学べますので,ドラマ視聴前に一読しておくと,より深くドラマを楽しめるのではないでしょうか。

定番のテキストです。まず法制度をきちんと学びたい人はまず本書を読むことをおすすめします。

さらに深く学びたい人は,金井貴嗣・川濵昇・泉水文雄編『独占禁止法(第6版)』白石忠志著『独占禁止法(第3版)』が定番かなと思います。

もう少しサクッと学びたい人には,こちらの書籍はいかがでしょうか。各項目の解説もコンパクトで,気になるところだけをつまみ読みすることもできます。

番外編です。法学セミナーのこの号には『競争の番人』の著者である新川帆立さん執筆の記事が載っています。また,法学セミナーの2021年4月号には『元彼の遺言状』の書評が載っています。評者はローマ法学者の木庭顕先生です。法学の研究者がこの小説をどのように読んだか気になる人も多いのではないでしょうか。