ネット上の誹謗中傷の厳罰化?侮辱罪の見直し検討開始

法学部
※アフィリエイト広告を利用しています
スポンサーリンク

2021年(令和3年)9月16日,法制審議会の総会が開催され,法務大臣から法改正に向けて下記について諮問がありました。

  • 氏名の読み仮名に係る戸籍法令の改正に関する諮問について
  • 性犯罪に対処するための法整備に関する諮問について
  • 侮辱罪の法定刑に関する諮問について

氏名の読み仮名と戸籍

一つ目の氏名の読み仮名については,下記の記事でも取り上げました。

性犯罪の見直し(同意年齢・性交同意・性的な撮影など)

2つ目は性犯罪の改正です。

これについては,わりと広い範囲での検討が行われており,法務省での検討会の結果を公表しており,これをベースにしつつ,さらに法制審議会で検討が進められると思われます。賛否が分かれている論点もありそうで,最終的にどのような改正になるのかは現時点では不明です。報道では,性交同意や性的な写真撮影などが取り上げられていましたね。

誹謗中傷の厳罰化(侮辱罪の法定刑引き上げ)

3つ目は,ネット上の誹謗中傷の過激化を念頭に置いた,侮辱罪の法定刑引き上げです。

現在(2021年9月)の侮辱罪の法定刑は「拘留又は科料」ですが,法務省案ではこれに「1年以下の懲役若しくは禁錮又は30万円以下の罰金」を追加するというものです。

これが実現すると,公訴時効も現在(2021年9月)の1年から3年になることになります(刑事訴訟法250条)。

さらに,法定刑に懲役・禁錮・罰金が定められると,刑法64条の規定がなくなるので,共犯の規定(教唆罪や幇助罪)が適用されることになります。

サイト運営者は今まで以上に適切な対処が必要になりそうですね。

侮辱罪(刑法231条)は「事実を摘示しなくても,公然と人を侮辱した者」と規定されており,公然性が構成要件に定められています。

そのため,被害者のみに送られたメールやSNSのDM(ダイレクトメッセージ)などは,侮辱罪では捕捉できないと思われます。万が一,そのような被害にあった場合や被害にあいそうな場合は,ブロックやアカウント変更・削除等ですぐに逃れるようにしましょう。我慢して受信し続ける必要もないですし,あまりにしつこい場合は,弁護士などに相談しましょう。侮辱罪でなくとも,ストーカー規制法など,別の法律でも対応できる場合もあると思います。

思いつめてしまう前に必ず誰かに相談しましょう。

法制審議会からの答申

また,「刑事手続において犯罪被害者の氏名等の情報を保護するための刑事法の整備に関する諮問第115号」についての要綱の答申があったと思われます。

近々,刑事訴訟法等の改正が行われると思われます。主に起訴状などに被害者の氏名の記載をするのかどうか,という点についての改正です。