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2021年刊行のおすすめ法学入門(新刊)

教科書・六法

2021年も残り数日になりました。

毎年たくさんの法学テキストや法律実務書が刊行されますね。

今回は2021年に刊行された法学入門の新刊を紹介していきたいと思います。
※改訂版を含めると膨大な数になるので,新刊に限定してリストアップします。

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法学入門の流行りのキーワードは「高校・高校生」!?

従来の法学入門のメインターゲットは大学1年生,法学部1年生でしたが,最近の法学入門は高校生をも読者ターゲットとして取り込んだものが増えてきています。

高校生からの法学入門』や『法学を学ぶのはなぜ?』などが,その例だと思います。

2021年にもこの流れに乗った1冊が刊行されました。

本書は,高校の「政治・経済」や「現代社会」,「経済活動と法」の教科書の内容を構成の柱に据え,法学の内容を再構成した意欲的な1冊です。

何かをはじめて学ぶときには,聞いたことのない用語などが続くとモチベーションが下がりがちですが,その中に知っている知識や用語などがでてくると安心するというか,「これならわかるぞ!」とモチベーションがあがったりしますよね。

他の法学入門でくじけてしまったような方にはおすすめできそうです。

まずは基本の7法(六法+行政法)を概観しよう

法学部の専門科目として,大きな比重を占めるのが六法(憲法・民法・刑法・商法〔会社法〕・民事訴訟法・刑事訴訟法)+行政法基本7法です。

これらの本格的な講義が始まる前に各法の基本を概観しておくと,講義でつまづくことも少なくなると思います。

ただ,本格的な専門科目を受ける前の準備運動なので,分厚いテキストは避けたいですよね。そんなニーズにぴったりな1冊が出ました。

本書の章立ては下記の通り。

  • 第1章 法学の基礎
  • 第2章 憲法(統治)
  • 第3章 憲法(人権1)
  • 第4章 憲法(人権2)
  • 第5章 民法(総則)
  • 第6章 民法(物権法・債権法)
  • 第7章 民法(家族法)
  • 第8章 刑法
  • 第9章 民事裁判制度:民事の紛争解決
  • 第10章 刑事訴訟法
  • 第11章 行政法(総論)
  • 第12章 行政法(救済法)

「12章もある……」と思った方もいるかもしれませんが,本書の総ページ数は200ページ

平均すると1章15ページほどです。これならちょっとした時間に1章読み通せますね。各法の専門科目の講義が始まる前に,本書の該当する章をあらかじめ読んでおくと,講義内容が理解できず,つまづいてしまうことが少なくなると思います。

法学入門にも「自己肯定感」!

育児において「自己肯定感」を育むことが重要である,と言われるようになって久しいですが,なんと法学入門にも「自己肯定感」の風が!それがこちら!

高校までに学びと法学部での学びのギャップについていけずに自信を喪失してしまう学生も少なくないですが,そんな学生に向けた1冊です。下記の目次からも企画意図が伝わってきますね。

第1部 法的な意見を述べることができるようになろう!
【第1章】 意見を述べて、理解できるようになろう!
法律学の学び/成立した契約を取り消す?/発展問題??契約当事者以外の第三者が存在する場合/3ステップの再確認/さらに学びたい人向けに?―展開問題
【第2章】 「わかりません」と逃げないようになろう!
「わかりません」という結論はタブー/法律の原則に遡って考える/法的三段論法を用いてみる/なぜ犯罪に当たらないのか?/ここまでのまとめ/なぜ犯罪に当たり得るのか?/大切なこと
【第3章】 意見の法的根拠に遡れるようになろう!
原理・原則に遡って問題の本質を見抜こう!/事例問題/問題の所在を突き止めよう!/疑問点を法律の原理・原則に遡って考えてみよう/原理・原則を体系的にとらえられるようになろう!/ここまでのまとめ/コラム①
第2部 法的な意見を書けるようになろう!
【第4章】 条文を読めるようになろう!
条文の構造/条文の解釈・適用/教科書の読み方/法令用語の使い方/設問の回答への道筋/ここまでのまとめ/基礎問題・発展問題について、考えてみよう!
【第5章】 判例を探し、条文解釈に用いて、事例に当てはめてみよう!
はじめに/第1ステップ/第2ステップ/第3ステップ/本章における3ステップの再確認/本章の最後に、さらなる学びを求めて
【第6章】 簡単な法律学の試験問題について答案を書けるようになろう!
法律学の試験/答案作成プロセス/実際に考えていこう/ここまでのまとめ/コラム②
第3部 新たな課題に取り組めるようになろう!
【第7章】 現在進行形の問題を考えてみよう!
日本の判例・学説を調べてみよう/設問に関する外国の法制度や裁判例を調べてみよう/設問に関する日本の法制度と外国の法制度や裁判例を比較して、その違いをまとめてみよう
【第8章】 法律・制度の運用実態に基づいて考えてみよう!
窃盗罪の確認/刑罰を決める順序/どのような刑罰が妥当か?/統計から処罰の現実に迫る/日本の刑事施設の現状/刑事施設出所後の社会復帰の困難さ/実刑が他の者の犯罪を防止していないにしても/ここまでのまとめ/現場に行って実態に迫る/社会に関わる当事者として問題を考える
【第9章】 法律・制度の歴史に基づいて考えてみよう!
設問に関する日本の法律・制度の歴史的背景について/設問に関する日本の法律・制度を確認する/歴史をたどり問題解決の糸口を探す/古い文献から、同時代の感覚を探れるようになろう!/歴史的な背景を整理し、歴史的制約について分析できるようになろう!/歴史から読み取る時代感覚と論理的な法思考/ここまでのまとめ/コラム③
第4部 レポートや論文を書けるようになろう!
【第10章】 従来の学説や判例を整理して位置付けることができるようになろう!
法律学のレポートを書くために/従来の学説や判例、判例評釈の収集方法/概要をまとめよう/相違点や対立を文章で示す/3ステップの再確認/さらに学びたい人向けに
【第11章】 従来の学説や判例を評価できるようになろう!
はじめに/第1ステップについて/第2ステップについて/第3ステップ/本章における3ステップの再確認/さらなる学びを求めて
【第12章】 自己の見解を論証できるようになろう!
敵を知ろう!/レポートを書く準備をしよう!/さあ、レポートを執筆しよう!/ここまでのまとめ/コラム④
-資料編-
 ①判例集
 ②法律関係書類の分類
 ③文献の検索・引用方法について
 ④新聞記事の検索・収集と引用方法について
 ⑤立法関係資料の閲覧・収集方法について
 ⑥裁判傍聴のすすめ
 ⑦施設見学に行こう!

いわゆる法学入門というよりは,その1段階前のステップの本,という印象です。勉強方法やレポートの書き方,条文や判例の読み方などを指南してくれる1冊です。

カフェパウゼで法学を』や『法学学習Q&A』に近い内容かなと思います。

王道の法学入門

次は,王道の法学入門です。

王道の法学入門といえば『現代法学入門』がロングセラーですが,2021年にあらたな王道の法学入門が刊行されました。

編者・執筆者は下記の通りで,各分野で活躍している気鋭・俊英の研究者が揃っていますね。みなさん東大出身の研究者ですね。

編者:宍戸常寿,石川博康
執筆者:内海博俊,興津征雄,齋藤哲志,笹倉宏紀,松元暢子

目次は下記の通りです。『現代法学入門』に近い構成ですね。

序章
第1章 法とは何か
第2章 法の適用
 §1 法と裁判
 §2 裁判の基準となるもの
 §3 法の解釈
第3章 法の体系
 §1 法の分類
 §2 国家と法
 §3 犯罪と法
 §4 家族生活と法
 §5 財産関係と法
 §6 労働と法
 §7 国際社会と法
第4章 法の発展

本書は東大系の執筆者によるものですが,個人的には京大系の新しい法学入門も読んでみたいですね。

知ったかぶりから脱却できる!

法学部ではじめに触れる専門科目が「憲法」だという人も多いと思いますが,当たり前のように西洋の思想家の話が出てきませんか?ケルゼンとかルソーとか……。

聞いたこともあるし,高校である程度は学習したかもしれませんが,知識があいまいだったり,憲法との接続がいまいち理解できない人も多いのではないでしょうか。私もその一人です。

そういったやや周辺的な知識で講義では詳しく解説がない事項について,こまかく注釈が付いている1冊がでました。

「です・ます調」で語りかけるような文体ですので,すいすいと読み進めることができると思います。

苦手意識がある人も多いと思われる西洋思想史周辺の知識やそれらと法学との接続などについて,「聞いたことはあるし,なんとなくイメージはできるけど……」という状態から脱却できる1冊だと思います。