そんなことまで犯罪に?――軽犯罪法

そんなことまで犯罪に?――軽犯罪法雑記

少し前に,コロナ禍でユーチューバーが多人数で深夜まで誕生日パーティーをしていたことが発覚し,炎上していました。

その記事の中で,あるユーチューバーが立小便をしていたと書かれていました。しかも写真付きでした。

(ネット記事によると,その後,自ら交番に出頭したようで,警察から注意を受けたようです)

最近では,立小便なんてほとんど見かけなくなった気がしますが,れっきとした軽犯罪法違反です(軽犯罪法1条26号)。

軽犯罪法では,このような類型の犯罪が多く規定されています。

だいたいのいたずらは規定されているのではないかと思われます。

軽犯罪法を見てみよう

軽犯罪法はたった4条しかない法律ですので,原文を引用してみましょう(2021年〔令和3年〕7月20日時点で施行されている条文です)

軽犯罪法(昭和23年法律第39号)

第1条 左の各号の一に該当する者は,これを拘留又は科料に処する。
  人が住んでおらず,且つ,看守していない邸宅,建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
  正当な理由がなくて刃物,鉄棒その他人の生命を害し,又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
  正当な理由がなくて合かぎ,のみ,ガラス切りその他他人の邸宅又は建物に侵入するのに使用されるような器具を隠して携帯していた者
  生計の途がないのに,働く能力がありながら職業に就く意思を有せず,且つ,一定の住居を持たない者で諸方をうろついたもの
  公共の会堂,劇場,飲食店,ダンスホールその他公共の娯楽場において,入場者に対して,又は汽車,電車,乗合自動車,船舶,飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
  正当な理由がなくて他人の標灯又は街路その他公衆の通行し,若しくは集合する場所に設けられた灯火を消した者
  みだりに船又はいかだを水路に放置し,その他水路の交通を妨げるような行為をした者
  風水害,地震,火事,交通事故,犯罪の発生その他の変事に際し,正当な理由がなく,現場に出入するについて公務員若しくはこれを援助する者の指示に従うことを拒み,又は公務員から援助を求められたのにかかわらずこれに応じなかつた者
  相当の注意をしないで,建物,森林その他燃えるような物の附近で火をたき,又はガソリンその他引火し易い物の附近で火気を用いた者
  相当の注意をしないで,銃砲又は火薬類,ボイラーその他の爆発する物を使用し,又はもてあそんだ者
 十一 相当の注意をしないで,他人の身体又は物件に害を及ぼす虞のある場所に物を投げ,注ぎ,又は発射した者
 十二 人畜に害を加える性癖のあることの明らかな犬その他の鳥獣類を正当な理由がなくて解放し,又はその監守を怠つてこれを逃がした者
 十三 公共の場所において多数の人に対して著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ,又は威勢を示して汽車,電車,乗合自動車,船舶その他の公共の乗物,演劇その他の催し若しくは割当物資の配給を待ち,若しくはこれらの乗物若しくは催しの切符を買い,若しくは割当物資の配給に関する証票を得るため待つている公衆の列に割り込み,若しくはその列を乱した者
 十四 公務員の制止をきかずに,人声,楽器,ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者
 十五 官公職,位階勲等,学位その他法令により定められた称号若しくは外国におけるこれらに準ずるものを詐称し,又は資格がないのにかかわらず,法令により定められた制服若しくは勲章,記章その他の標章若しくはこれらに似せて作つた物を用いた者
 十六 虚構の犯罪又は災害の事実を公務員に申し出た者
 十七 質入又は古物の売買若しくは交換に関する帳簿に,法令により記載すべき氏名,住居,職業その他の事項につき虚偽の申立をして不実の記載をさせた者
 十八 自己の占有する場所内に,老幼,不具若しくは傷病のため扶助を必要とする者又は人の死体若しくは死胎のあることを知りながら,速やかにこれを公務員に申し出なかつた者
 十九 正当な理由がなくて変死体又は死胎の現場を変えた者
 二十 公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり,ももその他身体の一部をみだりに露出した者
 二十一 削除
 二十二 こじきをし,又はこじきをさせた者
 二十三 正当な理由がなくて人の住居,浴場,更衣場,便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者
 二十四 公私の儀式に対して悪戯などでこれを妨害した者
 二十五 川,みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者
 二十六 街路又は公園その他公衆の集合する場所で,たんつばを吐き,又は大小便をし,若しくはこれをさせた者
 二十七 公共の利益に反してみだりにごみ,鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者
 二十八 他人の進路に立ちふさがつて,若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず,又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者
 二十九 他人の身体に対して害を加えることを共謀した者の誰かがその共謀に係る行為の予備行為をした場合における共謀者
 三十 人畜に対して犬その他の動物をけしかけ,又は馬若しくは牛を驚かせて逃げ走らせた者
 三十一 他人の業務に対して悪戯などでこれを妨害した者
 三十二 入ることを禁じた場所又は他人の田畑に正当な理由がなくて入つた者
 三十三 みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし,若しくは他人の看板,禁札その他の標示物を取り除き,又はこれらの工作物若しくは標示物を汚した者
 三十四 公衆に対して物を販売し,若しくは頒布し,又は役務を提供するにあたり,人を欺き,又は誤解させるような事実を挙げて広告をした者
第2条 前条の罪を犯した者に対しては,情状に因り,その刑を免除し,又は拘留及び科料を併科することができる。
第3条 第1条の罪を教唆し,又は幇助した者は,正犯に準ずる。
第4条 この法律の適用にあたつては,国民の権利を不当に侵害しないように留意し,その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。

ちなみに軽犯罪法1条21号は削除となっていますが,削除前は動物虐待が定められていました。現在は,法改正によって,動物虐待は動物の愛護及び管理に関する法律動物愛護法)で定められており,より重い刑罰が科されることとなっています。

軽犯罪法の罰則

軽犯罪法の罰則は「拘留又は科料」です。

拘留・科料の内容は,下記の通り,刑法で定められています

刑法(明治40年法律第45号)

 (拘留)
第16条
 拘留は,1日以上30日未満とし,刑事施設に拘置する。
 (科料)
第17条
 科料は,千円以上一万円未満とする。

れっきとした刑事罰ですので,有罪が確定すると前科になってしまいますよ。

どんな行為が軽犯罪になるの?

軽犯罪に該当する行為類型は軽犯罪法1条各号で定められています。原文は上記の通りですが,ありがちなものに限って一例を挙げてみます。
あくまで例ですので,これ以外の行為が該当しないというわけではないですし,例に挙げている行為でも他の事情により軽犯罪にならない場合も当然あり得ます。

  • 廃墟への侵入(1号,32号)
  • 正当な理由なく刃物等の隠して携帯する(2号)
  • 電車で暴れる(5号)
  • 交通事故の現場で警官の指示に応じない(8号)
  • 森の中で延焼等に十分注意をせずにたき火をする(9号)
  • 不用意に火薬で遊ぶ(10号)
  • 危険なペットを逃がしてしまう(12号)
  • イベントチケットの購入の列に威勢を示して割り込む(13号)
  • 警官に注意されても近隣住民の迷惑になるほどの大音量の音楽を流し続ける(14号)
  • 警察官の精巧なコスプレ(15号)
  • 嘘の119番通報をする(16号)
  • 中古ゲームを売却するときに店の帳簿に嘘を書く(17号)
  • 他人の家をのぞき見る(23号)
  • 結婚式でいたずらをして妨害する(24号)
  • 立小便やつば吐き(26号)
  • ごみのポイ捨て(27号)
  • つきまとい行為(28号)
  • 他人の家に勝手にポスターを貼る(33号)

これらの行為は,軽犯罪法のみに該当するわけではなく,その他の事情によってはより重い犯罪類型に該当する可能性があります

例えば,嘘の119番通報は,軽犯罪法1条16号に該当しますが,刑法233条の偽計業務妨害にも該当する可能性が高いです。

他の行為類型も,刑法だけでなく,銃刀法,廃棄物処理法,ストーカー規制法,道路交通法,迷惑防止条例,鉄道営業法など,より重い犯罪類型に該当する場合があります

逆に,警察官の精巧なコスプレはたしかに軽犯罪法1条15号に該当しますが,イベント会場でのコスプレを楽しむ程度なら検挙されることはないと思われます
その制服姿で,本物の警察官であると誤認させて悪さをするような場合は検挙対象になると思いますが,コミケなどのイベントで衣装として楽しむだけなら問題ないでしょう。

軽犯罪法違反の検挙実態

警察庁は犯罪実態についての統計を毎年公表しています。

令和元年の犯罪」(リンク先は警察庁ウェブサイトの該当ページ)の「第2特別法犯」の「63軽犯罪法違反 違反態様別 検挙件数及び検挙人員」を見ると,軽犯罪法違反の検挙件数が確認できます

令和元年の軽犯罪法1条各号の中で検挙件数トップ10は以下の通りです

  1.  第2号(凶器携帯の罪) 3,510件
  2.  第32号(田畑等侵入の罪)1,446件
  3.  第9号(火気乱用の罪) 984件
  4.  第16号(虚構申告の罪) 392件
  5.  第28号(追随等の罪) 385件
  6.  第26号(排せつ等の罪) 378件
  7.  第23号(窃視の罪) 302件
  8.  第31号(業務妨害の罪) 257件
  9.  第33号(はり札,標示物除去の罪) 155件
  10.  第20号(身体露出の罪) 146件

1位は凶器携帯でしたね。「護身用にナイフを持ち歩く」は「正当な理由がない」とされる可能性が高いです。特殊警棒なども同様です。職務質問や自動車検問などの際に見つかる場合が多いのかなと想像します。

不必要に刃物等は持ち歩かないようにしましょう。

20歳未満の検挙件数をみると,順位が変動します。

1位(業務妨害の罪),2位(田畑等侵入の罪),3位(凶器携帯の罪),4位(虚構申告の罪),5位(火気乱用の罪)と並びます。

おそらくいたずら」でやりすぎてしまったのでしょうね。

まとめ――人に迷惑になる行為は慎みましょう

軽犯罪法には,細かすぎると感じるほど多くの行為類型が定められていますが,そのほとんどが「自分がされたら嫌な行為」ですよね。他人に迷惑になるような行為をしないようにしていれば,軽犯罪法に該当することはないので,過度に気にする必要はないですよ。

軽犯罪法4条でも「この法律の適用にあたつては,国民の権利を不当に侵害しないように留意し,その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあつてはならない。」と規定されており,本法の適用は謙抑的であるべきとされています。