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令和3年民法改正(物権・相続・所有者不明土地関連)

令和3年民法改正(物権・相続・所有者不明土地関連)法学部

6月に入り,令和3年通常国会(204回国会)も終盤を迎えています。

今国会で民法が改正になりました。

民法は基本法ですので,法学部生にとっては要チェックです。

今秋に出る六法(令和4年版六法)は買い替え必須だと思います。

仮に民法の講義の履修が終わっていても,ほかの科目で民法を参照することが頻繁にありますから,買い替えをおすすめします。

本記事で取り上げる改正以外に,同じく令和3年通常国会(204回国会)で成立したデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(令和3年法律第37号)でも民法が改正されています。下記の記事で取り上げていますので,ご参照ください。

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令和3年民法改正(物権法改正・所有者不明土地関連改正)

令和3年通常国会(204回国会)での一番大きな民法改正は,物権法および所有者不明土地関連の改正です。

この改正は,年々増え続ける所有者不明土地の発生の防止と土地の適正な利用及び相続による権利の承継の一層の円滑化を図るための改正です。前者の所有者不明土地の発生の防止が主目的といえそうです。
(この改正で,所有者不明土地問題が一気に解決するというものではないです)

相隣関係ついての民法改正,共有についての民法改正,所有者不明土地等・管理不全土地等の管理についての民法改正,相続についての民法改正,相続した土地を国庫に帰属させるための手続等を定める法律の創設が主な内容です。

民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)によって,改正および新法制定が実現されています。

相続については,民法平成30年改正(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律〔平成30年法律第72号〕)でかなり大きな改正がありましたが,今回も内容的には大きな改正といえるでしょう。

以下で,改正内容を簡単に見てみましょう。

相隣関係についての民法改正

相隣関係は,ざっくり言えば,お隣さんとの土地等の使用などについてのルールです。

相隣関係については,大学の定期試験や資格試験などの正誤問題(択一問題)で頻出の分野です。試験前には改正内容をしっかりと正確に抑えておきたいですね。

法務省の改正要綱では,下記についての見直しがあったとされています。

  • 隣地の使用
  • 継続的給付を受けるための設備の設置権等
  • 竹木の枝の切除及び根の切取り

「継続的給付を受けるための設備」は,インフラ用の設備ですね。水道管やガス管のことです。土地が公道等に接していない場合にはこれらを自宅に引くためには他人の土地を通すしかないのですが,その場合のルールを定めているということです。

共有についての民法改正

共有についてのルールにも改正がありました。

特に相続が生じた際には,相続人が複数いることが多く,共有関係が発生しやすい場面です。一つの土地について数代にわたって相続が発生すると,関係者が多人数となり,所有者の確定や持分の確定が困難になります。次に見る相続の改正でも手当てがされていますが,あわせて,共有制度そのものの見直しも行われました。

法務省の改正要綱では,下記についての見直しや新制度の創設があったとされています。

  • 共有物の使用
  • 共有物の変更
  • 共有物の管理
  • 共有物の管理者
  • 裁判による共有物の分割
  • 相続財産に属する共有物の分割の特則
  • 所在等不明共有者の持分の取得
  • 所在等不明共有者の持分の譲渡

所有者不明土地等・管理不全土地等の管理についての民法改正

所有者が不明の土地や建物や管理不全の土地・建物について,裁判所の関与により,管理者を定め,管理命令を出せるようになりました。改正により,民法のなかに,その管理者の権限や義務等が定められることとなりました。

法務省の改正要綱によると改正内容は下記の通りです。

  • 所有者不明土地管理命令
  • 所有者不明土地管理人の権限
  • 所有者不明土地等に関する訴えの取扱い
  • 所有者不明土地管理人の義務
  • 所有者不明土地管理人の解任及び辞任
  • 所有者不明土地管理人の報酬等
  • 所有者不明建物管理命令
  • 管理不全土地管理命令
  • 管理不全土地管理人の権限
  • 管理不全土地管理人の義務
  • 管理不全土地管理人の解任及び辞任
  • 管理不全土地管理人の報酬等
  • 管理不全建物管理命令

相続についての民法改正

相続についても,上記の物権法の改正に合わせて,改正が行われました。

法務省の改正要綱によると改正内容は下記の通りです。

  • 相続財産の保存
  • 共同相続の効力
  • 期間経過後の遺産の分割における相続分
  • 遺産の分割の禁止
  • 相続を放棄した者による管理
  • 相続財産の清算人への名称の変更
  • 相続人のあることが明らかでない場合における相続財産の生産

また,相続法の改正に関連して,不動産登記法についても重要な改正がありました。

いくつかの改正がありますが,重要なのは,相続人に対する遺贈の登記については,その相続人(受贈者)が単独申請できるようになったところです。

改正前は,共同申請(相続人全員もしくは遺言執行者)だったのですが,単独申請となりました。実務的にはかなり大きな改正だと思います。

民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)によるその他の法律の改正

民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)では,上記で見た通り,民法と不動産登記法が改正されましたが,他に下記の法律が改正されています。

  • 非訟事件手続法
  • 家事事件手続法

具体的な手続に関する改正ですね。

また,附則で下記法律も改正されています。

  • 外国法人の登記及び夫婦財産契約の登記に関する法律
  • 抵当証券法
  • 大麻取締法
  • 相続税法及び租税特別措置法
  • 質屋営業法
  • 国土調査法
  • 農地法
  • 特許法
  • 建物の区分所有等に関する法律
  • 住民基本台帳法
  • 日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源の開発に関する特別措置法
  • 民事訴訟法
  • 破産法
  • 有限責任事業組合契約に関する法律
  • 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律
  • 特別会計に関する法律
  • 所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法
  • 表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)

民法等の改正とともに,新法として相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)が成立しました。

従来は,不動産の放棄の手続を定めた法律がなく,物権の一般ルールに従えば,所有者はその所有する不動産の放棄を自由にできるはずなのですが,実際にはできない,という状況でした。

判例でも,権利濫用として,放棄が認められてこなかった経緯があります(参考判例:広島高裁松江支部平成28年12月21日判決)。

不動産は一般的には資産的価値が高いものですが,放棄したいような不動産は,いわゆる「負動産」,つまり管理・維持に費用が掛かったり,利用価値がほとんどなく,誰も欲しがらない不動産であることが多いので,その放棄を自由に認めるということは避けたかったのだと思われます。
放棄を認めると国庫に帰属することになり,管理費用は税金からの支出となってしまいます。放棄が国への負担の押し付けとなるため,権利濫用とされたのだと思われます。

とはいえ,負動産問題や所有者不明土地問題・空き家問題は深刻化をたどる一方であり,一定のルール作りが必要になり,新たに制定されたのが,この「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。

下記のような内容が定められています。

  • 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属の承認に係る手続
  • 承認申請書等
  • 承認申請の却下
  • 承認
  • 事実の調査
  • 資料の提供要求等
  • 承認に関する意見聴取
  • 承認の通知等
  • 負担金の納付
  • 国庫帰属の時期
  • 国庫帰属地の管理
  • 雑則
  • 罰則

ポイントは以下の通りです。

放棄の対象

土地のみ

放棄申請ができる者

相続または遺贈(相続人に対する遺贈に限る)によりその土地の所有権の全部または一部を取得した者

放棄の申請ができない土地

  • 建物の存する土地
  • 担保権または使用および収益を目的とする権利が設定されている土地
  • 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
  • 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定める基準を超えるものに限る)により汚染されている土地
  • 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否,帰属又は範囲について争いがある土地

 “ややこしい土地”は放棄の申請自体できませんよ,ということですね。

申請しても放棄が承認されない土地

  • 崖(勾配,高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る)がある土地のうち,その通常の管理に当たり過分の費用または労力を要するもの
  • 土地の通常の管理または処分を阻害する工作物,車両または樹木その他の有体物が地上に存する土地
  • 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
  • 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
  • 前各号に掲げる土地のほか,通常の管理または処分をするに当たり過分の費用または労力を要する土地として政令で定めるもの

放棄にともなう負担金

土地所有権放棄の申請が承認された場合には,土地所有権の放棄のための負担金を納付する必要があります

負担金の額は,「国有地の種目ごとにその管理に要する10年分の標準的な費用の額を考慮して政令で定めるところにより算定した額」とされています。

簡単に言えば,10年分の管理費用ですね。

施行日の予定

民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)と相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号)の施行日は以下の通りです。

公布の日(令和3年4月28日)から起算して2年を超えない範囲内

(改正規定によっては施行日が上記より早いものや細かな経過措置が定められていますので,詳細は法律の原文で確認してください)

まとめ

今回の改正では民法の物権法と相続法,不動産登記法の内容に重要な変更があり,また,相続した土地の所有権放棄についても特別法が定められました。

法学部生にとっては,民法の物権法や家族法(相続法)の講義で扱う内容ですし,なにより基本法たる民法の改正ですので,今秋以降に刊行される令和4年度版の六法は買い替えることをおすすめします。

また,改正内容からいって,司法試験や予備試験受験生だけでなく,司法書士受験生にとっても重要な内容ですので,司法書士を目指している方は,これから刊行されるであろう新法解説の書籍・雑誌記事は要チェックですよ。