東京機械製作所とアジア開発キャピタル(その3・東京地裁が買収防衛策を容認)――マジョリティ・オブ・マイノリティ条項をめぐって

雑記
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マスコミでも大きく報道されていますが,東京機械製作所をめぐり買収劇に進展がありました。

買収者側であるアジア開発キャピタル(ADP)が東京地裁に申し立てていた防衛策差止めの仮処分について,2021年10月29日(金)に決定がでました。

まわりでもこの事件の行く末を気にしている人が結構います。いろいろと影響する範囲が大きそうですからねえ。仕事が増える未来が見える……。事件を追っかけながら,並行して勉強します。

東京地裁決定の概要

結論

東京機械製作所の買収防衛策を容認しました(差止めの申立て却下)。

一連の手続における,臨時株主総会での発動決議,つまりマジョリティ・オブ・マイノリティ条項による決議を有効としました。

東京地裁の判断

まだ裁判所のホームページには本決定がアップされておりませんが,ADP側のホームページで,決定内容について詳細に引用している文書がアップされていましたので,以下,それによります。

今後,なんらかの媒体で本決定文が公表されるのではないかと思われますので,正確にはそちらも確認してください。

  • 本件ADPによる買付行為は,ほかの株主にとって「相応の強圧性がある」。
    • ADPが買収後の経営方針等を明らかにせず,「適切な判断を下すための十分な情報と時間を確保することができないことにより,会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることとなるか否かについて,当該株主ら自身において判断させることは,直ちに不合理であるとはいえない」。
    • 上記の趣旨に照らすと,マジョリティ・オブ・マイノリティ条項による決議でも直ちに不合理とは言えない。
  • 臨時株主総会では79%の賛成で可決している。相応の強圧性を受ける株主のほとんどが,「買付行為について適切な判断を下すための十分な情報と時間を確保することができないことにより会社の利益ひいては株主の共同の利益が害されることになると判断したものということができる」。
  • 「総会の手続に適正を欠く点があったとはいえず……その正当性を失わせるような重大な瑕疵は認められない」。

今後――ADPは即時抗告?

上記で参照したADPの文書によると,「速やかに、東京高等裁判所に対し、本決定に対する即時抗告を行う予定です」とあります。

まあ,そうですよね。

そもそも今回の買収は通常の手法でなく,リスクがあることはADPも承知しているはずですので,地裁の決定のみで,「はい,そうですか」と引き下がる可能性は低そうです。

さらに言えば,今回の買収防衛策(新株予約権の無償割当て)が発動されたとしても,東京機械製作所に対するADPの影響力がなくなるわけではなく,発動後も30%程度の株式を保有する大株主です。

まだ終結までにはしばらくかかりそうですね。

強圧性って??

今回の東京地裁決定で強圧性という言葉がでてきました。

耳慣れない人もいるかもしれません(かくいう私も正確に理解している自信はまったくなく,不正確なことを書いてしまってもいけませんので,解説はしません)。

会社法などの議論のなかで,主にTOB(公開買い付け)の場面で議論されてきたものです。ここでの詳細な解説は(筆者の能力不足のため)割愛しますが,ざっくり言うと「損をするとわかっているのにその選択をせざるを得ない状態に置かれること」かなあ……。やっぱり自信ないです。。。ニュースでも用語解説している報道機関は少ないですね。

強圧性でググると解説もいくつかはでてきますし,より正確には専門の書籍等で確認するのがよいかと思います。

ちなみにADPは裁判所が「「強圧性」という不明確な要件を理由に」判断したことを強く批判しています。