六法は毎年新しいものが刊行されます。最新情報は出版社のホームページなどでご確認ください!
別記事(「六法は買った方がいいの? 毎年買い替えるの?」「六法の種類」)で法学部生はひとまず小型六法である『ポケット六法』か『デイリー六法』を買っておけば,(ほとんどの場合は)問題ないと書きました。
とはいえ,大学に入るまでに六法を購入した経験がない人がほとんどだと思いますので,どちらを買えばよいか迷ってしまう人もいると思います。
そんな人のために,この2冊を簡単に紹介します。
なお,以下では『ポケット六法』=ポケット,『デイリー六法』=デイリーと記すことがあります。
ポケット六法とデイリー六法の違い
たいそうに見出しをたてましたが,大学1年生や初学者にとってはほとんど違いはないかなー,と私は思っています。
(実際に,法学部入学直後のガイダンスなどでも,いくつか学習用の小型六法を紹介して,どれか1冊は持っておきましょう,と案内されることが多いと思います)
大学1年生段階や法学や資格試験の初学者にとってより重要なのは,自分にとってどちらの六法が読みやすい・使いやすいと感じるかといった感覚的な部分だと思います。六法は少なくとも法学の勉強では欠かせないツールですので,各教科の教科書よりも手に取る機会が多いものですから,自分自身が使いやすそう,読みやすそう,と思ったものを選ぶのがよいと思います。
書店などで実際に手に取って,(細かな内容上の違いがまだわからないとしても)紙質や紙面のレイアウトなど,どちらが自分に合っていると感じるかを実際に確認することをおすすめします。
もちろん,まったく違いがないというわけではなくて,参照条文の付け方とか抜粋収録の法令の条文の抜き出し方とか,違いはもちろんあります。そこは編集代表や編集委員が異なりますので,当然個性が出てくる部分だと思います。
ただ,この記事を読まれる方は,まだ法学の初学者に近い方が多いと思いますので,そういった方々が勉強を進めるうえで,勉強の効率に大きく優劣が出るほどの違いはない,という趣旨です(もちろん個人的な意見にすぎませんので,あくまでご参考までに)。
すでに参照条文や収録法令の違いにきちんと意味を見出せる人は,すでに勉強が相当進んでいる方だと思います。周りに六法で迷っている後輩などがいたら,是非いろんな観点からアドバイスしてあげてください。
内容的な違いが出てくる上記の参照条文や法令の収録範囲などについては,いずれの六法も一流の大学の先生方の手によるものですから,どちらも同レベルで高い信頼性があることは言うまでもありません。
令和6年版(2024年版)では,価格も2200円(本体価格,税込みだと2420円)とまったく同じです。
法学部生が勉強で使用する分にはどちらを使ってもほどんど影響はないですが,あえて違いを挙げると以下のようなものがあります。
- 出版社が違う(有斐閣と三省堂)
- 編集代表・編者が違う(ポケット=東大系の先生が多い,デイリー=京大系,東大系,私大系の先生が入っている)
- 収録法令数が違う(令和6年版だと,ポケット=199件,デイリー249件)
- 書体(フォント)や紙面のレイアウトが違う
- ブックデザインが違う
勉強で使用するうえで,影響がありそうな収録法令数ですが,これも致命的なほどに影響が出ることはありません。
50件近くも差があるではないか,という声が聞こえてきそうですが,六法には「抄録」「抜粋」というものがあり,ある法律のごく一部分のみを掲載することがあります。これも1件に含まれますから,極論すれば,ある法律の1条のみを掲載しても1件です。
ですので,数字ほどには差はありませんし,差を感じる場面は多くはないと思われます。
念のため,ページ数でも比べてみると令和5年版ではポケット2212ページ,デイリー2176ページと収録法令数とは逆の結果になっています。
デイリー六法には条文の中にある括弧書き部分に網掛けを施しています。
これについては評価が分かれている印象です。
文章に対する飾り付けとしてはやや強めの装飾なので,読みやすい・読みにくいの感じ方は人それぞれかと思います。
一つの文章がとても長くその一文の中に括弧書きが頻出するような条文がありますが,そのような条文についてひとまず括弧書きを飛ばし読みをして大まかに内容を知りたいときに,網掛けがあると読みたい箇所と飛ばしたい箇所が一目瞭然になります。
それでは,この2冊で迷ったとき(書店で実際に確認したとしてもどちらかに決めかねることもあるかもしれないですね)に,どんなことを優先すればよいのでしょうか。
以下では,ごく一般的なことですが,優先した方がよさそうな事項を書いてみます。
あくまで一般的なことですので,各大学や各講義で指定やガイダンスで指示があれば,それに従った方がよいことは当然ですので,あくまでご参考までに。
この記事を読む方は法学部の新入生や法律系の科目がある資格試験をこれから勉強し始める人が多いと思います。六法は基本的には毎年買い替えるものですので,もし合わなければ次年度から別のものにしてもよいと思います。あまり気負わずに(?)選んでみてください。
毎年秋に次年度版が刊行されます。
ポケット六法とデイリー六法で迷ったら?
大学や担当教員から指示があれば,それに従う。
「ポケット六法を買ってください」とか「デイリー六法を買ってください」という指示はあまり聞いたことがないですが,もしそのような指示があれば,なんらかの理由があるはずですので,それに従っておく方が無難です(たとえば試験時に持ち込みできる六法が決まっているとか)。
定期試験の際に貸与される六法と同じものにしてみる
すべての大学ではないですが,いくつかの大学では,試験時に六法が貸し出されることがあります。
普段使っている六法と貸し出される六法が別のものだとやはり使いづらさを感じます。
ましてや,定期試験は制限時間もありますので,使い慣れた六法の方が有利です。
自分の通っている法学部が試験時に六法の貸し出しがあるかどうか,調べてみましょう。
(先輩でもいいですし,この程度のことなら,法学部の事務室などでも教えてもらえると思います)
読みやすさ
これは記事冒頭で記載したことと同じことですが,あらためて。
ポケット六法とデイリー六法とでは,結構見た目(紙面)の印象が異なります。
(新聞を読み比べたときに,各紙の見た目の印象が異なるのと同じです)
印刷の字の書体が異なりますし,レイアウトも異なります。自分が読みやすいと思った方が当然勉強しやすいでしょう。
特徴的なのは,ポケット六法の字はデイリー六法の字と比べてやや平べったいです。
ここはわりと好みが分かれる印象です。
私の個人的な印象では,読みにくいと感じたことはありませんでした(初めて購入した六法がポケット六法だったので,そういうもの,と感じていただけかもしれませんが)。
六法は勉強中に頻繁に参照するものですので,普段使っている六法の紙面にすぐに目が慣れてしまいます(ですので,上記の通り,貸出六法がある場合には,それに揃えた方が試験中に違和感を感じて集中力を削がれる可能性が低くなります)。
字だけでなく,紙面のレイアウトも結構異なっていますので,実際に本屋さんでじっくり眺めてみて,自分の読みやすい方を買うのが一番だと思います。
普段の勉強にストレスがないのが一番です(他に理由がなければ,読みにくいと感じる方を我慢してまで使い続ける必要はないと思います)。
この2冊以外に小型六法はないの?
ポケット六法とデイリー六法以外にも法学六法(信山社)というものもあります。
編集代表のお名前を見ると,慶應大学系の先生方のようですね。
ポケット六法とデイリー六法よりも,収録法令をかなり厳選しています。
大学や教員から購入指示があれば別ですが,多くの教員は,ポケット六法・デイリー六法を持っていることを想定して講義を行うことが比較的多いのではないかと思いますので,やや細かい法令に話が及んだ場合には,法学六法では足りないこともあるかもしれません。
とはいえ,価格も安く,薄いため持ち運びには便利ですし,2色刷で読みやすさへの工夫も凝らされていますので,気になる方は書店で見てみてください。
番外編――ノベルティ
ポケット六法には,ろけっとぽっぽーという公式キャラクターがいます。
(ポケット六法の言い間違いから生まれたそうです。アナグラムにもなってますね)
秋の最新版の刊行直後にポケット六法を購入するとノベルティがもらえることがあります。クリアファイルをもらえたことがありました。
すべての書店で行っているわけでもなさそうですし,継続的な営業施策かどうかもわかりませんので,今後どうなるかわかりませんが,ろけっとぽっぽーファンや六法に特にこだわりのない人は,ノベルティの有無で決めるということでもよいかもしれないですね。ほかに箱のデザインや色味の好みを購入の決め手にしている人も結構多いです。
またノベルティではないですが,ポケット六法には「ポケ六通信」というメールサービスがあるようです(刊行後の改正情報を配信するとのこと)。