関西スーパーとオーケーストアの株主総会決議をめぐる争いについての雑感

雑記
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2021年10月29日,関西スーパーの臨時株主総会において,関西スーパーが株式交換等を用いることでH2Oリテイリングと経営統合をすることについての採決が行われました。

一連の関連する本臨時株主総会での決議はすべて可決されましたが,僅差での可決でした。

その後,関西スーパーをめぐってH2Oリテイリングと争っていたオーケーストアは,当日の採決の集計に疑義があるとして,本件株式交換の差し止めの仮処分を神戸地裁に申し立てました。

疑義の概要

大きく報道されていたので,あらためて紹介するまでもないですが,簡単にまとめておくと以下のような流れです。すでに司法の場に争いが持ち込まれていますので,細かな事実については,今後の司法の事実認定に委ねるしかないことは言うまでもありません。

  1. ある株主の担当者が本臨時株主総会に出席(法人株主とは明記されていませんが,職務代行通知書等を提出しているので,法人株主なのでしょう)。
  2. ただし,この株主は事前に委任状及び議決権行使書を提出しており,本議案について全て賛成の意思表示をしていた(関西スーパー側のプレスリリース)。
  3. その担当者は,本議案に全て賛成の意思表示をする旨が記載されていた職務代行通知書を当日の受付に提出していた(関西スーパー側のプレスリリース)。
  4. 本臨時株主総会の当日は投票用紙を用いた投票による採決をすることとしており,使用する投票用紙には何も記入せずに投票用紙を提出した場合には「棄権」として取り扱う旨を記載していた。また会場においてもその旨の案内を行っていた。
  5. 上記の担当者は,投票用紙に何らの記入も行わなかった(ただし,関西スーパー側のプレスリリースによると,この担当者は,投票用紙の回収の際に、本議案全てについて事前に行った賛成の意思表示のとおり議決権行使をする意思である旨を回収担当者に対して述べていた)。
  6. 集計結果が検査役に伝えられ,その時点では反対が賛成を上回っていた(オーケー側プレスリリースでは14時57分ごろ)。
  7. 上記の担当者から総会受付に対し、自らの投票が事前に行った賛成の意思表示のとおり取り扱われているか確認してほしい旨の申出があった(オーケー側プレスリリースでは15時30分ごろ)。
  8. 上記担当者から事実確認を行い,賛成と扱うこととした(オーケー側プレスリリースでは15時45分ごろ)。

だいたいこんな流れです。パラパラと関西スーパー,オーケーストア双方がプレスリリースを出してやり合っていますので,より正確にはそちらを確認してください。

報道もおおむね上記の通りだったと思います。

まあ,オーケーストアからすれば,恣意的な議事運営が行われた!と言いたいところだと思います。しかも今回の決議は僅差でしたので,黙っているわけにはいかないでしょうね。

株式交換の効力発生日

今回の差止仮処分の対象となっている株式交換の効力発生日は2021年12月1日です。

同日までになんらかの司法判断が示されるものと思われます。

気になること

関西スーパー側のプレスリリースによると,投票後の上記の法人株主の担当者への確認で,下記の事実が確認されたとしています。

この株主様は,投票用紙に記入を行わなかったものの,投票用紙の回収の際に,本議案全てについ
て事前に行った賛成の意思表示のとおり議決権行使をする意思である旨を回収担当者に対して述べ
ていたこと

関西スーパー「当社の臨時株主総会における議決権行使の集計経過に関するお知らせ」(2021年11月9日付)

なぜ,このときに回収担当者は投票用紙への記入を促さなかったのでしょうか……?

回収担当者には白紙であることまでは伝わらなかったのかもしれないですね。

投票結果が僅差になることは,事前に予想できていたでしょうから,総会運営の担当者は相当にピリピリしていたでしょうし,慎重に慎重を期して臨んでいたと思われます。それでも今回のようなことが生じてしまうのですね。しかも,この一事で可決と否決という結論が逆転してしまう場面です。
事実は小説より奇なり,とつくづく感じます。本件を題材にすれば,(面白いかどうかは別としても)経済小説を1本くらい書けてしまいそうです。

白紙投票してしまった担当者は,自らの投票が賛成と扱われているかの確認をわざわざ求めています。

白紙=棄権,という注意書きを読み落としてしまい,後で気が付いて慌てた,ということなのかな?
真相はわかりません。

でも,他社の命運を左右する株主総会で,もし同じようなことを自分がやってしまったらと想像すると,青ざめるどころではないですね……。

どういう経緯で本件のような事実の流れが生じてしまったのか,という点は気になります。今後,総会運営において防止策を講じるうえでも参考になるかもしれません(滅多に生じることではないでしょうが,生じてしまったときのリスクが大きすぎるので,外野としてはできれば今後の防止策を検討しておきたいところです)。

オーケーストア側も,この株主(およびその担当者)を問題にする意図はまったくなく,あくまで総会運営がまずかったのではないか,という点を問題にしています。

オーケーストアのプレスリリースでもその点は強調されており,報道各社へのお願いとして,本件は臨時株主総会の「議事運営及び議決権の取り扱いに係る問題」であり,特定の株主の投票行動を何ら問題にするものではなく,その株主を特定するようなことは厳に避けてほしい旨の注意書きを掲載しています下記の文章を掲げています(オーケー株式会社「関西スーパー様の臨時株主総会における議決権行使の集計に係る疑義の判明について」(2021年11月8日付))。

当ブログも,当該株主等を特定する意図はまったありませんし,特定するつもりも毛頭ないことは言うまでもありません。