2022年(令和4年)10月14日,嫡出推定や懲戒権などの改正を含む民法改正法案が閣議決定されました。
第210回国会(臨時会)に閣法12号「民法等の一部を改正する法律案」として改正法案が提出されました。
メモがわりに改正事項をまとめておきます。
主な改正事項
- 再婚禁止期間の撤廃
- 嫡出の推定
- 父を定めることを目的とする訴え
- 嫡出の否認
- 嫡出否認の訴え
- 嫡出の承認
- 嫡出否認の訴えの出訴期間
- 子の監護に要した費用の償還の制限
- 相続の開始後に新たに子と推定された者の価額の支払請求権
- 胎児の認知
- 認知の無効の訴え
- 子の人格の尊重等(懲戒権規定の廃止)
再婚禁止期間はかつて離婚後6か月とされていましたが,最高裁判所大法廷2015年(平成27年)12月16日判決(民集69巻8号2427頁)が,再婚禁止期間のうち100日を超える部分については「憲法14条1項に違反するとともに,憲法24条2項にも違反する」として違憲判決を下していました。
この違憲判決を受けて,2016年(平成28年)に,再婚禁止期間を離婚後6か月から100日へと短縮する改正が行われました(平成28年法律第71号)。
今回の改正は,離婚後100日とされていた再婚禁止期間を完全に撤廃するものです。
改正法案に含まれる民法以外の法令
民法の上記の改正に伴って,下記の法令も改正される予定です。
- 児童福祉法
- 国籍法
- 児童虐待の防止等に関する法律
- 人事訴訟法
- 家事事件手続法
- 生殖補助医療の提供等及びこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律
施行予定(改正法案)
今回の改正法案が成立したのち,いつ施行されるかは法案の附則に記載があります。
公附 則
(施行期日)
第1条 この法律は,公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第1条中民法第822条を削り、同法第821条を同法第822条とし、同法第820条の次に1条を加える改正規定並びに第2条及び第4条の規定は、公布の日から施行する。
上記の通り,原則として公布後1年6か月以内の施行ですが,民法の懲戒権の削除(とそれに伴う児童福祉法・児童虐待の防止等に関する法律の改正)は即日施行(公布日から施行)となっています。
形式面で注意が必要な点
この改正で民法の条文のいくつかが削除になります。
- 削除される民法の条文
- 第733条(再婚禁止期間)
- 第746条(再婚禁止期間内にした婚姻の取消し)
- 第822条(懲戒)
これだけなら問題ないのですが,今回の改正法案では懲戒権の第822条が削除され,現行の第821条が1条ずれて822条になります(条文番号の繰り下げ)。そして新821条に新規条文(子の人格の尊重等)が追加されます。
現行条文
- 第821条(居所の指定)
- 第822条(懲戒)
改正法案
- 第821条(子の人格の尊重等)※新設
- 第822条(居所の指定)※繰り下げ(旧第822条(懲戒)は削除)
改正成立後に,改正が反映された六法と改正未反映の教科書・テキストを使う場合には注意が必要ですね。
詳しい改正内容は法案を確認してみてください。
法務省や衆議院・参議院のウェブサイトに掲載されています。