報道によると,2022年11月15日に法制審議会家族法制部会は家族法制の改正に向けての中間試案を取りまとめたようです。
主な論点
取り上げられた主な論点は下記のようなものです。
- 親子関係に関する基本的な規律の整理
- 子の最善の利益の確保等,子に対する父母の扶養義務
- 父母の離婚後等の親権者に関する規律の見直し
- 離婚の場合において父母双方を親権者とすることの可否,親権者の選択の要件,離婚後の父母双方が親権を有する場合の親権の行使に関する規律,離婚後の父母の一方を親権者と定め、他方を監護者と定めた場合の規律,認知の場合の規律
- 父母の離婚後の子の監護に関する事項の定め等に関する規律の見直し
- 離婚時の情報提供に関する規律,父母の協議離婚の際の定め,離婚等以外の場面における監護者等の定め,家庭裁判所が定める場合の考慮要素
- 親以外の第三者による子の監護及び交流に関する規律の新設
- 第三者による子の監護,親以外の第三者と子との交流
- 子の監護に関する事項についての手続に関する規律の見直し
- 相手方の住所の調査に関する規律,収入に関する情報の開示義務に関する規律,親子交流に関する裁判手続,養育費、婚姻費用の分担及び扶養義務に係る金銭債権についての民事執行に係る規律,家庭裁判所の手続に関するその他の規律
- 養子制度に関する規律の見直し
- 成立要件としての家庭裁判所の許可の要否,未成年養子縁組に関するその他の成立要件,養子縁組後の親権に関する規律,縁組後の扶養義務に関する規律
- 財産分与制度に関する規律の見直し
- 財産分与に関する規律の見直し,財産分与の期間制限に関する規律の見直し,財産に関する情報の開示義務に関する規律
- その他所要の措置(戸籍とか裁判手続等)
主な対立点は?
上記の通り,改正内容は多岐にわたりますが,主な争点はやはり離婚後の親権,つまり,離婚後共同親権を導入するか否か,に尽きるのではないでしょうか。
マスコミの報道もほとんどがそこに焦点を当てています。
他の論点でも対立は見られるようですが,対立のベースとなっているのは,やはり離婚後の一方の親(多くの場合は非同居親・別居親)の子への関与をどこまで認めるのか,という点でしょう。
単独親権存続を推す陣営はDV(配偶者からの暴力)や虐待から子を守る必要がある点を強調します。
共同親権導入を推す陣営は国際的には共同親権が多いことや父母間関係と親子関係とを区別して考えるべきという点を強調します。子の福祉という視点や子どもの権利条約との関係もあります。
今回の中間試案では,いずれかの立場によることはなく,両論併記となっています。これからパブリックコメントを経て,法制審議会としての落としどころを探すことになりそうですね。
雑感
多用な家族の在り方や個人を最大限尊重するというリベラル的な考え方からだと共同親権推進の方に親和的かなと思うのですが,実は自民党側が共同親権を推しています。
野党側は(党によってニュアンスが異なるものの),DVや虐待からの保護(主に女性保護という目線)を強調して,共同親権導入に慎重な態度をとっています。
なんだかいつもと逆な感じがしますが,それだけ問題の根が深く,複雑なのだと思います。
DVや虐待への手厚い対応も必要になりますが,現状すでにパンク状態という話もあるようです。人員や予算の手当てが必要ですし,どこが所掌するのか,という問題もありそうです。こども家庭庁がその重要な一翼を担うのでしょうか。