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【同性カップルの法的保護】不貞行為(浮気・不倫)に対する損害賠償・最高裁が認める

【同性カップルの法的保護】不貞行為に対する損害賠償・最高裁が認める法学部

先日(2021年3月17日),札幌地裁で同性婚が認められないことに対して違憲判決がでました。

この判決については下記で紹介しています。

そして,この札幌地裁の違憲判決と同日に,最高裁で同性カップルの法的保護に関する判決がありました。

本記事ではこの判決を読んでいきたいと思います。

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本件の判決の出典

最高裁決定

最高裁の上告棄却決定は令和3年(2021年)3月17日に出たようですが,裁判所のウェブサイトには掲載されていません。具体的な理由を示さず,上告棄却(一審,二審の判断を是認)したようですので,裁判所のウェブサイトには掲載がないかもしれないですね。

東京高裁判決

本件に関する第二審,つまり東京高裁の判決は次のものです。裁判所のウェブサイトで検索すれば判決原文が閲覧できます。

東京高等裁判所令和2年3月4日判決,事件番号:令和元年(ネ)第4433号,損害賠償請求事件

宇都宮地裁真岡支部判決

本件に関する第二審,つまり宇都宮地裁真岡支部の判決は次のものです。裁判所のウェブサイトで検索すれば判決原文が閲覧できます。

宇都宮地方裁判所真岡支部令和元年9月18日判決,事件番号:平成30年(ワ)第30号,損害賠償請求事件

本件の事実の概要

原告と同性婚の関係にあった被告A及び後に被告Bと婚姻した被告Bに対し,被告らが不貞行為を行った結果,原告と被告Aの同性の事実婚(内縁関係)が破綻したとして,共同不法行為に基づき,婚姻関係の解消に伴う損害賠償を求めた。

つまり,事実婚状態(内縁状態)にあった同性カップルの一方(被告A)が,別の者(被告B)と不貞行為をしたので,AとBに損害賠償を求めた,ということです。

異性間の婚姻関係(事実婚〔内縁〕含む)に置き換えて説明すると,夫が不倫をした場合に,妻が夫と不倫相手に損害賠償を請求する,ということです(本件事案に当てはめると,妻=原告,夫=被告A,不倫相手=被告B)。

異性間の婚姻関係(事実婚〔内縁〕含む)なら,よくある事案で,損害賠償が認められることが多いです(実際に損害賠償が認められるかどうかは,故意などの事実認定が重要になりますが)。

本件の主な論点

事実婚状態にある同性カップルに異性間の事実婚と同様の法的保護が認められるか,が問題になります。

事実婚状態にある同性カップルにも法的保護が認められるとすれば,それを破綻させるような行為(不貞行為)は不法行為となり,損害賠償も認められることになります。

先に結論を言えば,事実婚状態にある同性カップルにも法的保護が認められました

本件判決の判旨

上記の通り,最高裁は具体的な内容判断はしておりませんので,高裁・地裁の判決を読んでいくことになります。

第二審・東京高裁の判決は基本的には第一審を維持するものです。ただ,判決の書き方が個人的には嫌いなタイプの書き方です……。第一審判決の判決文を補正するタイプ(第一審判決の〇ページ△行目に次の一文を追加する〔次の通り訂正する〕というタイプ)です。

読みづらいんですよね,このタイプ……。(気になる人は裁判所のウェブサイトで判決を検索して,原文を読んてみてください)

事実婚(内縁関係)の法的保護

そもそも,法律婚ではない事実婚(内縁関係)も法的保護が認められるのか? と思う人もいるかもしれませんね。

この点については,すでに最高裁判例が出ています。本件でも引用されています。

最高裁判所昭和33年4月11日判決・民集12巻5号789頁

この最高裁判決により,内縁関係は婚姻関係に準じるものとして保護される生活関係であると認められています。

事実婚状態(内縁状態)にある同性カップルの法的保護

上記の最高裁昭和33年判決は,判決当時の社会状況などを鑑みれば,男女のカップルを想定したものです。同性カップルにも法的保護が認められるか否かは別途検討が必要になるでしょう。

第一審・宇都宮地裁真岡支部判決の判旨

近時,価値観や生活形態が多様化し,婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況となっている。世界的に見ても,同性のカップル間の婚姻を法律上も認める制度を採用する国が存在するし,法律上の婚姻までは認めないとしても,同性のカップル間の関係を公的に認証する制度を採用する国もかなりの数に上っていること,日本国内においても,このような制度を採用する地方自治体が現れてきていることは,公知の事実でもある。かかる社会情勢を踏まえると,同性のカップルであっても,その実態に応じて,一定の法的保護を与える必要性は高いということができる(婚姻届を提出することができるのに自らの意思により提出していない事実婚の場合と比べて,法律上婚姻届を提出したくても法律上それができない同性婚の場合に,およそ一切の法的保護を否定することについて合理的な理由は見いだし難い。)。また,憲法24条1項が「婚姻は,両性の合意のみに基いて成立し」としているのも,憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず,およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されないから,前記のとおり解することが憲法に反するとも認められない。
 そうすると,法律上同性婚を認めるか否かは別論,同性のカップルであっても,その実態を見て内縁関係と同視できる生活関係にあると認められるものについては,それぞれに内縁関係に準じた法的保護に値する利益が認められ,不法行為法上の保護を受け得ると解するのが相当である(なお,現行法上,婚姻が男女間に限られていることからすると,婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は,少なくとも現時点においては,飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり,同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべきである。)。

第二審・東京高裁判決の判旨

同性同士のカップルにおいても,両者間の合意により,婚姻関係にある夫婦と同様の貞操義務等を負うこと自体は許容されるものと解される上,世界的にみれば,令和元年5月時点において,同性同士のカップルにつき,同性婚を認める国・地域が25を超えており,これに加えて登録パートナーシップ等の関係を公的に認証する制度を採用する国・地域は世界中の約20%に上っており,日本国内においても,このようなパートナーシップ制度を採用する地方自治体が現れてきているといった近時の社会情勢等を併せ考慮すれば,控訴人及び被控訴人の本件関係が同性同士のものであることのみをもって,被控訴人が前記のような法律上保護される利益を有することを否定することはできない。

上記の控訴人は被告A,被控訴人は原告のことです。

本件判決(第一審・第二審)のまとめ

いずれの判決も,世界的に同性カップルや同性婚を認める国が増えてきていること,国内においても登録パートナーシップ制度を設ける地方自治体が現れてきていることを考慮して,本判決時点においては,事実婚状態にある同性カップルも法的保護が認められるとしています。

なお,第一審判決(宇都宮地裁真岡支部判決)においては,「現行法上,婚姻が男女間に限られていることからすると,婚姻関係に準じる内縁関係(事実婚)自体は,少なくとも現時点においては,飽くまで男女間の関係に限られると解するのが相当であり,同性婚を内縁関係(事実婚)そのものと見ることはできないというべき」としています。

本記事が「事実婚“状態”」と表記しているのは,この判示部分を考慮しております。

事実婚状態にある同性カップルは,異性間の事実婚に準じた法的保護が与えられるということですが,今後,同性間と異性間とで保護範囲になんらか差が出てくるかもしれませんね。

本件判決とともに,冒頭で紹介した札幌地裁同性婚違憲判決を読んでみると見当が深まるかもしれませんね。