2022年(令和4年)通常国会で成立した法改正で法学部生にとって重要なものは?

法学部
※アフィリエイト広告を利用しています
スポンサーリンク

2022年(令和4年)6月15日,第208回国会(通常国会)が閉会しました。

今年は夏に参議院選挙が予定されていることもあって,延長なしでしたね。

今回の国会もたくさんの法改正がありましたが,法学部生・法科大学院生や司法試験受験生などの資格試験受験生にとって重要な法改正はあったのでしょうか。チェックしてみましょう。

民事法

  • 消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和4年法律第59号)(青字が消費者契約法,緑字が消費者裁判手続特例法の改正内容)
    • 契約の取消権を追加
    • 解約料の説明の努力義務
    • 免責の範囲が不明確な条項の無効
    • 事業者の努力義務の拡充
    • 対象範囲の拡大
    • 和解の早期柔軟化
    • 消費者に対する情報提供方法の充実
    • 特定適格消費者団体を支援する法人を認定する制度の導入
  • 民事訴訟法等の一部を改正する法律(令和4年法律第48号)
    • いわゆる民事裁判手続のIT化
    • 犯罪被害者等の氏名等の情報秘匿制度

刑事法

  • 刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号,整備法は令和4年法律第68号)
    • 懲役及び禁錮を廃止して拘禁刑に統一
    • 受刑者の処遇の充実化
    • 侮辱罪の法定刑引き上げ(厳罰化)

その他

法学の試験関係には直接的には影響はやや少ないですが,重要な法改正や新法制定もいくつかありました。主に子ども関係が多いですね。
また,話題の電動キックボードに関する規制緩和も成立しました(道路交通法の改正)。ただし,改正法の施行はしばらく先なので(公布後2年以内の施行予定),まだ無免許ノーヘルで公道を走ると取り締まられますよ!

  • こども基本法(令和4年法律第77号)
  • こども家庭庁設置法(令和4年法律第75号)
  • 児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)
    • 支援の年齢上限を撤廃
    • 一時保護の要否の判断に家庭裁判所が関与する手続を新設
    • わいせつ行為をした保育士が再登録する場合の規則を厳格化
  • 道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)
    • いわゆる電動キックボードの規制緩和など
  • AV出演被害防止・救済法(令和4年法律第78号)
    • いわゆるAV新法ですね。正式名称は「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」です。長いですね。

六法買い替えは?

例年通り,秋に小型六法や判例付き六法の最新版(令和5年度版)が刊行されると思いますが,今回の国会での法改正によって買い替えが必要になるのでしょうか。

個人的には今秋に買い替えることをおすすめします。

まず,法定刑が変わります。侮辱罪厳罰化だけでなく,そもそも禁錮・懲役といった区別がなくなり,拘禁刑に統一されます。大学の試験などで未施行段階で改正法・現行法いずれで解答すべきかは各講義の担当の先生に必ず確認してほしいのですが,六法は買い替えておくことをおすすめします。

また,民事訴訟法の改正は,内容的にはかなり大きな改正です。しかも結構重要な条文の番号がズレます(133条→134条に繰り下げ)。教科書も順次改訂されていくと思います。

以上から,秋以降に刑法や民事訴訟法の講義を履修する予定があるなら特に買い替え推奨です(履修科目にかかわらず六法は毎年買い替えるのが原則ではあるのですが)。