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【読書記録】馳星周『ソウルメイト』『陽だまりの天使たち(ソウルメイト2)』

読書記録

犬と人間のかかわりについての短編集。

続けて2冊読みました。

馳星周氏の著作をはじめて読みましたが,とても静かな文章を書くのだなと感じました。
軽井沢に生活の拠点を置いているそうなのですが,その空気間が伝わるような文体です。

ハードボイルドな小説を書くことが多いそうですが,本作2冊からは想像ができません。近いうちにそちらの小説も読んでみようかなと思います(手始めに『不夜城』がよいでしょうか)。

印象に残ったことなどをいくつかメモ。

  • 「犬を過度に擬人化してはいけない」
    • すくなくとも本作2冊はこの一言に凝縮されているかなと思います。擬人化してはいけないとわかっていつつも,擬人化してしまう。むしろ擬人化することでしか犬を理解できない。擬人化することで人は犬に救われ,別れの悲しみからも立ち直れる。そんなことを感じました。
  • 保護犬
    • 本作に登場する犬のほとんどは保護犬です。そのレスキューをやっている人物が短編を通して登場します。この人物に語らせていることが馳氏が伝えたいことなのかな。保護犬が生じてしまう原因,すなわち無責任な飼い主がいるわけですが,本作中では彼らへのむき出しの怒りはほぼ描かれません。それがかえって読者に「動物を飼うことへの責任」を強く訴えかけます。無責任な飼い主を非難するより,これから飼う人にその責任を説くことに注力しています(もちろん無責任な飼い主は許されるべきではありませんが)。この辺りは,近年話題になっているSNS等での社会の分断や誹謗中傷などを考えるうえでも参考になりそうです。

近年は,環境問題や生物多様性の話題も多いですが,人間はどうしても擬人化しやすい動物に目を向けがちですよね。研究予算が多い動物や保護団体がいる動物などは,やはり擬人化しやすい動物なのではないでしょうか。

擬人化しづらい動植物の保護を考えるうえでも「過度に擬人化してはいけない」という一言のもつ意味が広がります。