民事判決のデータベース化

法学部
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2022年6月25日,民事裁判の全判決のデータベース化に法務省が取り組むと報道がありました。
法務省内に有識者会議を設けて検討を進めるそうです。

これは画期的ですね。

しかも判決文の匿名化等の処理にはAIを使うそうです。IT化が遅れていた分野だと思っていましたが,一気にDXが進みそうですね。

報道によれば,データベースの利用者の範囲も検討するようです。全国民が無条件に閲覧できるか否かはこれからの検討次第のようですね。

この施策の布石は,内閣官房民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議民事司法制度改革の推進について」(2020年(令和2年)3月10日)に示されています。

第2 民事裁判手続等のIT化
 (中略)
 1 民事裁判手続等のIT化の在り方
 (中略)
 (3) IT化の将来的な方向性とAIによる紛争解決手続へのサポートの可能性
 イ 民事判決情報の提供について
 民事判決情報は,国民にとって,紛争発生前には行動規範となるとともに,紛争発生後には当事者による紛争解決指針の一つともなり得るものであり,社会全体で共有・活用すべき重要な財産である。将来的に,AIによる紛争解決手続のサポートの可能性があり,その活用が国家経済の活性化にもつながり得るものであることも踏まえると,現状,先例性の高い事件や社会的に関心の高い事件等の一部の事件に限定して一般に提供されている民事判決情報については,今後,より広く国民に提供されるべきである。
 そこで,法務省は,民事判決情報を広く国民に提供することについて,司法府の判断を尊重した上で,ニーズやあい路等につき必要な検討をする。
 また,最高裁判所においては,民事判決情報の提供も含め,法務省における上記検討に協力することが期待される。

民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議「民事司法制度改革の推進について」(2020年(令和2年)3月10日)

「より広く国民に提供されるべき」とあることから,閲覧制限を設けるとしても限定的になりそうな印象です。

また,報道によると公益財団法人「日弁連法務研究財団」の検討会(民事判決のオープンデータ化検討プロジェクトチーム〔ワーキングチームとして「民事判決データベース化事業の在り方に関するWG」と「民事判決情報の仮名処理の在り方等に関するWG」があるようです〕)も2022年6月に早期に法整備を行うべきとの提言をまとめていたようです。財団のウェブサイト上では2022年6月の提言はまだ見つけられませんでした(2022年6月25日現在)。

全判決がデータベース化されることで,判決内容のAIによる分析なども進むのでしょうか。裁判の予測可能性がより高くなりそうですね。

判例データベース会社や判例雑誌を刊行している出版社などにとっては大きな影響を受けそうですが,そのあたりはどうなんでしょうね。また,全判決とありますが,過去の判決原文が保管されている判決が含まれるのかが気になりますね(保管されているのは一部の判決文だと思いますが)。