大学に入学後にちょっと戸惑ってしまうことが多いのが,講義の受け方。
高校までの授業とはスタイルが異なることが多いと思います。
しかも,どの講義も同じスタイルならそれに合わせていけばいいのですが,講義によって(担当する教員によって)本当にバラバラ。
板書もあったり,なかったり。
あっても気まぐれに単語が書かれるだけとかも多いと思います。
(担当教員からすれば,きっと気まぐれではないと思いますが,慣れていないとそう感じてしまうかもしれませんよね)
レジュメという聞き慣れないプリントアウトが配られることもあるけど,その内容も千差万別。
教科書も指定された本があるにもかかわらず,講義中はほとんど使わないこともあると思います。
とにかく高校までの授業とギャップが大きいと感じる人も多いでしょう。
そのギャップの大きさについていけず,いわゆる5月病にかかってしまう学生さんも少なからずいると聞きます。
本記事がそんな悩みの解決の一助になればうれしいです。
とはいえ,あくまで一般論ですのでご参考までに・
(実際の講義や担当教員の指示の有無でおおきく変わると思います)
講義の種類
法学部の講義はいくつかの種類に分けられると思います。
分け方はいろいろあると思いますが,講義の受け方,という点に着目すると,おおきく以下の2種類に分けられるでしょうか。
レクチャー形式
基本的には,講義時間の大部分が担当教員からの講義内容の伝達となる講義です。
基本科目や必修科目に多いでしょうか。
憲法や民法,刑法など,法学部の学生ならほとんどの人が履修する科目では,1クラスの人数も多くなりますね。
この場合は,教員と学生,学生同士のディスカッションはなかなか難しいので,やはり担当教員の話を聞くことが主の講義になると思います。
(もちろん,工夫をして,学生とのやりとりをする先生も増えてきています)
演習形式
この形式の代表は,ゼミ(ゼミナール)です。
ゼミもシラバス上では,その名称は「○○法演習」となっていることが多いと思います。
ゼミ以外にも,履修人数の少ない講義では,学生の積極的参加を前提とした演習形式が取られることもあります。
大学の講義は1コマ90分程度の大学が多いと思います。
高校時代と比べるとかなりの長時間になりますので,レクチャー形式と演習形式をミックスした講義をされる先生も増えてきているようです。
ずっと一方的に話を聞いているだけだと,なかなか集中力を持たせるのが難しいこともあると思いますので,こうした工夫は学生にとってはメリハリがついていいと思います。
講義の受け方
はじめに――講義でやってはいけないこと
当たり前のことなのでここに書くかどうか迷いましたがルール違反をしてしまう人もゼロではないので,はじめに書いておきます。
私語厳禁
私語は厳禁です。
これは絶対にだめです。周りの人の迷惑です。
法律的にいえば,学生は講義を受ける権利を持っており講義中はその権利を行使しているわけですが,私語によって,話が聞き取れない,集中できないという状況が発生した場合,その人の権利を侵害していることになります。
私語をする人にとってはすこしおしゃべりをしているだけという認識でも,結果的には他人の権利を「積極的に」侵害していると言えます。
うっかり私語をしてしまう人も他の学生を邪魔するつもりはないとは思います。ですが結果的には他人の権利を侵害し,邪魔をされた人からすればせっかくの講義時間が無駄な時間になってしまいます。
他人の邪魔までして私語をしたいと思う人はほとんどいないでしょうから講義中の私語は慎みましょう。
居眠りは注意しないのに私語に対しては厳しく対応する教員がいると思いますが(おそらく)このような理由によります。
居眠りもあまりよくはないですけどね。
そこまでしても必要な私語はあまりないでしょうし,やむを得ずどうしても必要があるときは邪魔にならないようにそっと席を外して教室から出てからにしましょう。
もちろん講義中に周りの人との相談やディスカッションを指示された場合には,思う存分自分の考えを発表してください。
これは言うまでもなく私語ではないです。
遅刻・早退はできるだけしない
遅刻・早退もできるだけ避けましょう。
私語と同様の理由です。
学生も担当教員も集中力がそがれてしまい効率が落ちてしまいます。
電車の遅延をはじめとして,やむを得ない場合ももちろんあると思いますから,その場合はできるだけ静かにそっと入室するようにしましょう。
(教室の前後にドアがあるなら,後ろから入る方がよいでしょうね)
レクチャー形式――レジュメがある場合
そもそもレジュメって何?
大学に入ると突然「レジュメ」という言葉が使われます。
中学・高校でも,学校によっては使用していたかもしれませんがあまり多くはないでしょう。
レジュメはフランス語の résumé からきており,人によってはレジメとも言います。
レジュメにはその日の講義で話す内容の概要が示されていることがほとんどです。当日話す内容のプログラムだと思えばいいです。
もっとも,レジュメがどの程度詳しい内容になっているかは作成者次第です。
レジュメが詳しい場合
レジュメが詳しい場合,学生にとってはノートにまとめ直す必要が低くなりますので,とても有り難いと感じる人が多いと思います。
とはいえ,あまりに詳しいレジュメは,逆にどこに重点があるのかが一見しただけではわかりにくい場合もあります。
ですので,詳しいレジュメが出る講義の場合は,重点的に話された内容には,ラインマーカーを引いたり,余白に話された内容を補足しておくのがよいでしょう。
使用したレジュメはしっかりと保管しておきましょう。また,別にノートをとった場合には,必ずレジュメとセットで保管しておきましょう。
レジュメは講義を前提としたものです。詳しいレジュメがあるからといって講義を欠席ばかりしているとレジュメをみても重点や書いてある内容の趣旨がわからず試験前に右往左往することになりますよ。
レジュメがあまり詳しくない場合
レジュメがあっても,見出し程度のものしか記載されていない,ということもあります。
レジュメ自体に余白がたくさんあれば,そこに書き込んでいけばよいです。
レジュメに余白があまりない場合は,講義内容自体は別のノートにとるのがよいでしょう。この場合はレジュメには,ポイントのみを書き込む,教科書の該当ページについての言及があった場合にはそれを書き込む,示された見出しの中で特に重点的に話された内容があればチェックしておく,ということをしておくと試験前に便利だと思います。
レクチャー形式――レジュメがない場合
レジュメがない場合は,当然,自分でノートを作成する必要があります。
高校までの授業と一番大きなギャップがあるのがこのパターンではないでしょうか。
板書がある場合
丁寧な板書がある場合には,それを書き取ることでレジュメになります。
この場合は,あまり悩むことなく板書を書き取りつつ,板書にはないが教員が話した内容で重要なポイントを付け加えることで,十分なノートが完成します。
あとは試験前に教科書とそのノートを見直すことで対応できるのではないでしょうか。
板書がない場合,板書がすくない場合
板書がまったくない,または,黒板・ホワイトボードを使うことには使うが,キーワードを書くのみ,訴訟や事件の人物の関係図を書くのみ,といったことも多いのではないでしょうか。
むしろ少し前までは大学の講義はこのパターンがほとんどでした。
最近は,講義の学生アンケートなどでこのパターンは評判が低くなることが多いそうで,レジュメを出したり,板書を丁寧にしたりして,工夫している教員が増えてきているようです。学生さんにとってはとてもありがたいですね。
このパターンでも,聞き書きが得意な人は問題ないでしょう。
聞いた内容を素早くノートにまとめていけばよいのです。
聞き書きがそんなに得意ではない人も多いと思います。大学に入るまで聞き書きを訓練することもなかったですから,入学時点で得意でなくても心配いりません。
ただ,就職活動や就職後は聞き書きすることが多いので,苦手意識を持たずに卒業後のためにも少しずつ訓練することをおすすめします。
とはいえ,訓練の前に単位がとれなければ意味がないですよね。
聞き書きの訓練をしつつ,このパターンの講義内容を修得するにはどうすればよいでしょうか。
あくまで一例ですが,以下のような方法はいかがでしょうか。
教科書がある場合
指定された教科書がある場合には,講義で話された内容の箇所にとにかくなにか印をつけておく。
ノートを取りながら,教科書にも適宜マーカーや書き込みができればベストですが,難しい場合は教科書に印と日付のみをメモする,ノートに教科書の該当ページをメモしておく,とかでもよいと思います。
指定教科書がある以上は,基本的には試験もその教科書に書かれている内容の範囲内であることが通常ですから,教科書を読み返すときの目安となる印を付けておくと効率的に試験前の勉強ができるでしょう。
教科書がない場合
学生にとっては,このパターンが一番困ってしまうのではないでしょうか。
正攻法は,とにかくまめにノートをとるということになります。一緒に受けている友達などがいれば,試験前にノートを交換することで自分が書き漏らしたことを補完できるでしょう。
入学直後や履修人数が少ない講義などではそのような友人もいない,あるいは,少ないこともあると思います。そういった場合には,思い切って担当教員に教科書の代わりとなる本や論文がないかを質問することをおすすめします。多くの場合は,おすすめの書籍や論文をいくつか教えてくれると思います。
体調不良などで,どうしても講義を欠席せざるをえない場合もあると思いますので,そういったときのバックアップとしても,読むべき本,論文を聞いておくことは有益です。
オムニバス形式の講義では,各回担当教員が変わり,テーマも変わることが多いです。
オムニバス形式だと一つの書籍を教科書としていないことも多いので,講義を聞いて,いまいち理解できなかった,もっと詳しく知りたい,などと思ったときも講義後かオフィスアワーにおすすめの本・論文を教員に尋ねてみましょう。
またシラバスには講義計画が示されていますので,それも確認しておきましょう。
演習形式
多くの場合はゼミを指すでしょう。
学生の積極的な参加を前提にした講義です。場合によっては,扱う内容や進め方もすべて学生主体で決める場合もあります。
演習形式の場合は,取り組む作業や内容は一定程度明確になっているので,講義の受け方やノートの取り方がわからない,ということにはなりにくいと思います。
もっとも,学生自らの発表を求められることがほどんどで,その発表への資料の作成等で困ってしまうこともあるかもしれません。
この点について書き出すと,かなり長くなりそうなので,また機会を見つけて,別にまとめていければと思います。
さいごに
講義のノートですが,一言一句正確に書き取ることは至難の業です。
できなくて当然ですし,仮にそれができたとしても,試験前に見返すためのノートとしては不適切であることが予想されます。不要な情報や要点がわかりにくいためです。
慣れないうちは,講義の要点,重点を明確にする,あとで詳しく扱った事件の事実関係を図にしておく,教科書などを読み返すときの目安にする,といった目的でノートをとれば十分です。
そもそも講義は,すでにある学問体系を前提に成り立っていることがほとんどですから,たとえ教科書指定や板書がなくとも,その講義で扱った項目に触れられている本や論文はかならず存在するはずです。
ですので,うまくノートがとれないからと言って,講義に出席することを早々に諦めるのではなく,担当教員に直接尋ねたり,その単位を履修済みの先輩(その教員のゼミに所属しているならベスト)に聞いてみるなどして,文献を探してみましょう。
書籍もない,論文もないような未知の領域について,1単位使って講義することはほとんど考えられませんし,仮にもしそのようなことをするのであれば,演習形式をとることが多いでしょう。
(半期15回程度の講義の中で,頭の体操として,1~2回そのような話題を取り上げることはあり得ます。その場合でもヒントとなる論文くらいはあると思いますが)