去年(2021年)の下半期に話題になったアジア開発キャピタル(ADC)による東京機械製作所の買収劇ですが,しばらくウォッチをさぼっている間に大きな動きがありました。
備忘をかねて記録しておきます。
ADCの持ち株の一部をマスコミ各社が買取
ADCが持つ東京機械製作所の株式の一部をマスコミ各社が買い取ると発表がありました。
「アジアインベストメントファンド株式会社……及び……アジア開発キャピタル株式会社……と,株式会社読売新聞東京本社……,株式会社朝日新聞社,株式会社中日新聞社,株式会社北海道新聞社,信濃毎日新聞株式会社及び株式会社北國新聞社……との間で、アジアインベストメントファンド〔とアジア開発キャピタル〕が保有する当社の普通株式の一部を本件買主に相対取引で譲渡することがそれぞれ合意された」
東京機械製作所「株式の売出し、主要株主、主要株主である筆頭株主及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」(2022年2月25日)
東京機械製作所は輪転機メーカーですから,新聞各社がその行く末を案じていました。そのあたりは下記の記事でも触れています(今回の買収劇の初期段階で新聞社・通信社40社が連名で懸念を表明しています)。
そして,この度,新聞各社がADCの保有株の一部を買い取ることについて合意が成立したようです。
取引の概要
上記のプレスリリースや報道等を確認しますと,下記のようにまとめられそうです。
- 売却単価
- 1株800円
- 買主
- 株式会社読売新聞東京本社
- 株式会社朝日新聞社
- 株式会社中日新聞社
- 株式会社北海道新聞社
- 信濃毎日新聞株式会社
- 株式会社北國新聞社
- ADC側の保有比率
- 約40%→約8%に減少
- ADC側の損益
- 2022年3月期に16億円の株式売却損を計上
新聞各社のうち,読売新聞東京本社が25%を取得し,その他の新聞各社がそれぞれ2%~0.5%を取得するようです。
依然としてADCが8%ほど保有するようですが,再取得はしないようです。
これで,本件についてはひとまず決着したといえそうですね。
おまけ
本件の買収劇の裏側について,興味深い記事が東洋経済オンラインに掲載されていました。
「物言う株主すら退散する「M&A最強タッグ」の正体」という記事です。
東京機械製作所側に,西村あさひ法律事務所の太田洋先生(弁護士)が付き,IR会社のアイ・アールジャパンとPR会社のパスファインドとの連携によって,買収防衛に成功したという内容です。活動内容があまり表に出ないIR会社とPR会社についても少し知ることができる内容でおすすめです。
下記の東洋経済本誌の記事も気になるので,購入してみようかと思います。