2021年2月9日,デジタル庁の設置を柱としたデジタル改革関連法案(6つの法案)が閣議決定され,国会に法案が提出されました。
このデジタル改革関連法案は下記6つの法案です。
- デジタル社会形成基本法案
- デジタル庁設置法案
デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案
公的給付の支給等の迅速かつ確実な実施のための預貯金口座の登録等に関する法律案
預貯金者の意思に基づく個人番号の利用による預貯金口座の管理等に関する法律案
地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案
ざっと眺めると,デジタル庁を設立して,マイナンバー的な個人情報の利活用の促進を図る程度の法案かなーと思いましたが,念のため,法案をチェックすると大学生(主に法学部生)も無視できない法改正が含まれていることが分かりました。
「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」は令和3年5月19日に公布されました(令和3年法律第37号)。
施行日は原則として「令和3年9月1日」とされています。
デジタル庁設置で民法が改正される??
上記6つの法案のうち,「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」によってさまざまな法律が改正されるようです。
いわゆる整備法と呼ばれるものですね。
なかでも重要なのが民法の改正です。
こんな法案で基本法たる民法が改正されるなんて……。見落としてしまいそうですよね。しかも,改正箇所は2か所のみですが,実質的な内容の改正を含むので,とても重要です。
改正案は下記の通りです。
改正前 民法
(受取証書の交付請求)
第486条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。対して受取証書の交付を請求することができる。
改正後 民法
(受取証書の交付請求等)
第486条 弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。対して受取証書の交付を請求することができる。
2 弁済をする者は、前項の受取証書の交付に代えて、その内容を記録した電磁的記録の提供を請求することができる。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課するものであるときは、この限りでない。
改正前 民法
(外国に在る日本人の遺言の方式)
第984条 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事が行う。
改正前 民法
(外国に在る日本人の遺言の方式)
第984条 日本の領事の駐在する地に在る日本人が公正証書又は秘密証書によって遺言をしようとするときは、公証人の職務は、領事が行う。この場合においては、第969条第4号又は第970条第1項第4号の規定にかかわらず、遺言者及び証人は、第969条第4号又は第970条第1項第4号の印を押すことを要しない。
いずれの条の改正も,いわゆる「脱はんこ」の流れを受けたものだと言えるでしょう。
もっとも,この改正によって,実体法の民法の解釈に影響があるかないかはよくわかりません。今後の論文や解説書を待つしかないですね。
「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」の内容
上記の通り民法まで改正してしまう「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」ですが,ほかにどんな法律が改正されるのでしょうか。
「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」で改正される法律は,じつに143にものぼります。
法学部生の勉強に影響がありそうな法律をあげると「宅地建物取引業法(宅建業法)」,「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」,「借地借家法」が改正されます。宅建士試験合格を目指している人は注意が必要ですね。
おそらくこの令和3年通常国会で成立するでしょうから,来年は六法を買い替えた方がよさそうですね。