法律系の書籍・雑誌のほかに,普段は小説を読むことが多いです。
寝る前や移動時間中に読むことが多いです。kindleも持っているので,紙の本と電子書籍の割合は半々くらいですね。
自分の備忘録もかねて,読んだ本の感想などを書き散らしていこうかなと思います。
ネタバレとかあまり気にせずに,思ったことを書いているので,以下の記事を読む際はご注意ください。
柚月裕子『盤上の向日葵』
本日は,柚月裕子『盤上の向日葵』。単行本は2017年刊行で,文庫本も2020年に刊行されています。いずれも中央公論新社からの刊行です。
柚月裕子さんの作品は,ほかに『慈雨』も読みました。こちらも後日感想を書きたいと思います。
あらすじ
埼玉の山中で,白骨死体が見つかる。その死体とともに名匠の「将棋の駒」が一緒に埋められていた。死体が駒を胸に抱くように。
死体発見から4か月後。事件を追う埼玉県警の石破と佐野は,天童市で開催されている将棋の竜昇戦が開催されるホテルにたどり着いていた。タイトル6冠の壬生芳樹と実業家出身で奨励会を経ずプロになった異端の棋士・上条桂介の大注目の一戦。
死体の身元は? なぜ死体とともに将棋の駒が埋められていたのか? 一組の名匠の将棋の駒からつながる数奇な運命をたどる将棋ミステリー。
感想とか
私は将棋はうまくないです。駒を動かすことができる程度です。それでも作品は楽しめましたので,ご安心を。棋譜が記述される場面がありますが,理解できなくてもさほど支障はないです(理解できた方がより楽しめるのかもしれませんが)。
このことからわかるように,将棋自体は舞台装置の一つです。
私が個人的に一番のテーマとして感じ取ったのは,自死の連鎖。
自死については,デュルケームの自殺論をはじめ,研究が進められているところだと思いますが,自死の要因はさまざまです。
自死のさまざまな要因については研究が進められていると思いますが,詳しくは,専門書を参照してください。
少なくとも,身内などの身近な人の自死は残された人に大きな影響を与えることは確かでしょう。そして,それはわかりやすく表面的に影響を表す場合もあれば,心の奥底に本人ですら気が付かない形でわずかにこびりついているような場合もあるでしょう。
本書は後者のようなものを,上条桂介の生い立ちを丁寧に描写することで浮き上がらせているように感じました。タイトルの向日葵もこれに関連します。
作品中に真剣師の東明重慶という人物が登場し,重要な地位を占めます。この東明には実在のモデルがいると言われています。これはググればすぐにわかりますので,気になる人は調べてみてください。
この実在のモデルがいると言われる東明の登場により,作品中の将棋という舞台が際立ち,将棋とミステリーという要素がうまくミックスされますが,読了後はやはり向日葵が主題なのだろうなーと思った次第です。
爽快感や疾走感のあるミステリーでは決してないですが,続きが気になる構成となっており,一気に読み進められます。