WOWOWで『ソロモンの偽証』のドラマが始まるみたいですね。
だいぶ前ですが,法廷物の小説かなーと思って手に取りました。内容的には法廷物というよりは王道ミステリーに近い感じですが,終盤は法廷物の雰囲気もあり,楽しめました。
宮部みゆきさんは,誰もが知る売れっ子作家で,ジャンルも時代物・本格ミステリー・ファンタジーとなんでもござれな作家さんですが,法律系の話題を題材した小説も多くあります。
消費者法を勉強している人なんかは,『火車』もおすすめです。
ネタバレとかあまり気にせずに,思ったことを書いているので,以下の記事を読む際はご注意ください。
宮部みゆき『ソロモンの偽証』
宮部みゆきさんの2012年刊行の3部作の長編小説で,各巻700ページを超えています。2014年に文庫本もされていますが,こちらは全6巻です。
映画にもなりました。これだけの長編小説の映像化ですから,映画も前編・後編の2部作です。
韓国でもドラマ化されたようです。
あらすじ
クリスマスの夜,ある中学校の屋上から中学生が転落して死亡した。警察は自殺と判断したが,その後,その中学校の不良少年が犯人であるという告発状が校長・担任・クラス長の生徒に届き,物語が動き始める。
この転落死事件の謎を解き明かすべく,数人の中学生が校内裁判で真相に明らかにすることを決意し,証拠集め・証言者探しに奔走します。思春期の不安定な心情も絡まりながらも,少しずつ真相に近づいていき,いよいよ校内裁判の日を迎える。
感想とか
小説としての良質なエンターテインメントでありつつ,各登場人物の心理描写が非常に細かく,とくに思春期にありがちな嫉妬や虚栄などがリアルに描かれており,「あー,自分も中学生くらいのときこんな感情をもつこともあったなあ」と思い出しながら読み進めました。
謎や伏線の回収はさすが一流作家という感じです。
裁判制度の運営などはいろいろと突っ込みたくなりますが,中学生が自主運営していると思うとそれもまたリアルな感じがします。
校内裁判は,ややもすれば,先入観によるただのリンチ,断罪の場に陥りがちですが,そうはならずに目的を最後まで達成した中学生たちは立派でした。
ネットの炎上・誹謗中傷などが頻発する現在,本書から学べるところもあるのではないでしょうか。2012年に読んだときとはまた違った印象をもちました。
なお,冒頭で紹介したWOWOW版のドラマは場面設定をSNSが普及する現代にするようです。
インターネット・SNSがある時代にどう物語が進むのか,気になりますね。SNSは裁判を進めようとする側の人間にとって武器にも障壁にもなりそうですね。原作では公衆電話がキーアイテムでしたが,WOWOW版ドラマではSNSがキーアイテムになりそうな予感です。
余談
文庫版の『ソロモンの偽証: 第Ⅲ部 法廷 下巻 (新潮文庫)』には,主人公・藤野の20年後が描かれた中編小説「負の方程式」が収録されています。
小説・ドラマ・映画ではまった人で是非チェックしてみてください。