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落選運動と公職選挙法?――いよいよ総選挙

法学部

※本記事は執筆時点(2021年10月16日)によるものであり,その後の法改正には対応しておりませんので,ご注意ください。

2021年10月14日,衆議院が解散しましたね。

10月19日公示・10月31日投開票で,総選挙が行われます。

この選挙期間中は,選挙運動を行うことができるようになります。ということは,選挙運動に関するアレコレの規制も適用される時期ということにもなり,投票の呼びかけや候補者に関する事項など,なにか活動・発言・発信(インターネット上での発言も含む)を行う場合には最新の注意を払う必要があります。

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選挙運動って何?

そもそも選挙運動ってなんなのでしょうか?

実は選挙運動に関する規制を定めている公職選挙法にも「そもそも何が選挙運動なのか」「選挙運動の定義」は明文で定められていません

近年の新規立法であれば,きちんと用語の定義規定を整備することがほとんどですが,公職選挙法は昭和25年制定の古い法律でもありますから,定義規定がなくても仕方がないとも言えます。

とはいえ,選挙運動の中身があいまいかというとそうではなく,実務や判例ではすでにほぼ固まった解釈があります。それは以下のようなものです。

判例・実例によれば、選挙運動とは、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされています。

総務省のHPより

総務省のホームページでは上記のように示されています。

また,古い判例ですが,選挙運動について言及した判例もあります。この判例は(下記の落選運動に関する判例としてですが)総務省のガイドラインでも参照されています(改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン(第1版:平成25年4月26日))。

選挙運動トハ一定ノ議員選挙ニ付一定ノ議員候補者ヲ当選セシムヘク投票ヲ得若ハ得シムルニ付直接又ハ間接ニ必要且有利ナル諸般ノ行為ヲ為スコトヲ汎称スル

出典:大判昭和5年9月23日刑集9巻678頁

はじめの総務省ホームページの選挙運動の定義は文言を比較すると,この判例を下敷きにしているようですね(もしかすると,もっと古い判例があるかもしれませんが,私では見つけられませんでした)。

落選運動って何?

最近,落選運動という言葉も耳にする機会が増えました。

とくに直近の2021年8月の横浜市長選挙に際して,立候補を予定していた方が,立候補を取りやめて落選運動に専念すると方針転換したことで,一気に注目が集まりました。

落選運動と選挙運動は違うのでしょうか?

選挙運動と同じく,落選運動も公職選挙法には定義規定がありません

では,どんな活動が落選運動なのでしょうか。

これも総務省のガイドライン(改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン(第1版:平成25年4月26日))の問18の注で言及があります。選挙運動のところで紹介した判例(大判昭和5年9月23日刑集9巻678頁)で落選運動についての判断が示されています。

単ニ議員候補者ノ当選ヲ得シメサル目的ノミヲ以テ選挙ニ関シ不正ノ方法ニ依リ選挙ノ自由ヲ妨害スルカ如キ行為ハ之ヲ以テ選挙運動ナリト称スルヲ得ス

出典:大判昭和5年9月23日刑集9巻678頁

より正確に言えば,「落選運動とは」を示したというよりも「単にある候補者を当選させない目的のみによる行為」は「選挙運動」に該当しない,すなわち選挙運動に関する規制を受けない,と判断したことになります。

この判例をもとに,上記ガイドラインの問18では,下記のような記述があります。

何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみを図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている(大判昭5.9.23刑集9・678等)。

本改正における「当選を得させないための活動」とは、このような単に特定の候補者(必ずしも1人の場合に限られない)の落選のみを図る活動を念頭に置いており、本ガイドラインでは、当該活動を「落選運動」ということとする。

出典: 改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン(第1版:平成25年4月26日)

落選運動のポイントとしては, 「落選のみを図る活動」 というところだと思います。つまり,落選を図ることで,別の候補者の当選を有利にするような意図がある場合には選挙運動に当たるとされる場合があります。

また,落選運動については,従来,規制はなかったのですが,インターネットを利用した選挙運動の解禁に伴い,インターネットを利用した落選運動についても規定が新設されました。

公職選挙法(昭和25年法律第100号)

 (インターネット等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者の表示義務)
第142条の5 選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、ウェブサイト等を利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、その者の電子メールアドレス等が、当該文書図画に係る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器の映像面に正しく表示されるようにしなければならない。
 選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当日までの間に、電子メールを利用する方法により当選を得させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、当該文書図画にその者の電子メールアドレス及び氏名又は名称を正しく表示しなければならない。

選挙期間中にインターネットを利用して落選運動をする場合には,メールアドレスや氏名等の表示義務があります。

また,言うまでもないですが,落選運動ならなんでもありというわけではありません。当然ながら,虚偽事実等の公表は禁止されています(公職選挙法235条2項)。

選挙運動は規制だらけ

公正な選挙を確保するために,上記で紹介した事項だけでなく,選挙運動には本当にたくさんの規制があります。

本職の候補者や選挙事務所ですら,うっかり違反してしまうことがあるくらいですから,選挙期間中は十分に気を付けたいですね。

とくにSNSやメールなど,容易に拡散可能なツールが増えましたが,良かれと思ってしたリツイートメール送信・メール転送が公職選挙法違反だったりすることもありますので,とりわけインターネット上での選挙関連の発言・発信には気を付けましょう

総務省のホームページにあるチラシがわかりやいので,目を通しておくことをおすすめします。