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注釈民法とは?新版注釈民法?新注釈民法?それぞれ違いは?

注釈民法?新版注釈民法?新注釈民法?それぞれ違いは?書籍・六法

別記事で注釈書一般について概観してみましたが,今回は『注釈民法』にスポットを当てたいと思います。

日本では大型の法律注釈書と言えば『注釈民法』がその代表です。

法律実務での権威性も高いです(とはいえ,注釈民法に書いてあるからといって,そのことのみをもって裁判所がその通りに判断することはもちろんないです。ただし,『注釈民法』に書いてあるとないとでは主張の裏付けの強さが変わってくるような気がします)。

そんな『注釈民法』ですが,3種類あります。すべて有斐閣からの刊行です。

注釈民法』,『新版注釈民法』,『新注釈民法』の3つです。
これらの全巻の構成やそれぞれの違いなどを見ていきたいと思います。

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注釈民法,新版注釈民法,新注釈民法の違いの概要

注釈民法新版注釈民法初版と改訂版の関係にあります。

注釈民法を改訂したのが新版注釈民法ですね。

ですので,注釈民法と新版注釈民法とでは,同じ条文は同じ執筆者であることも多いです。

もっとも,執筆者が交替している条もあります。
両社の執筆者を眺めてみますと,編者もしくは元の執筆者の弟子筋の研究者が新しく執筆者に加わっていることが多いです。
(もちろん例外はあります)

それに対して,新注釈民法は,注釈民法新版注釈民法の改訂版すなわち注釈民法の第3版という位置づけではないです。

編集代表や各巻の編者も一新しています。

新注釈民法の巻頭にある「『新注釈民法の』刊行にあたって」という序文にも下記の記述があります。

『新版注釈民法』が『注釈民法』の改訂版であったのに対して,『新注釈民法』はこれらとは独立の新しい書物として企画した。

注釈民法の概要

編集代表

中川善之助,柚木馨,谷口知平,於保不二雄,川島武宜,加藤一郎

巻数,全巻構成

26巻全27冊
※9巻は別冊も出ていますが,増補再訂版で合本されたので,1冊とカウントしています。

第1巻[1条~32条の2](1964年11月)319ページ
第2巻[33条~89条](1974年12月)426ページ
第3巻[90条~98条](1973年4月)258ページ
第4巻[99条~137条](1967年9月)418ページ
第5巻[138条~174条の2](1967年11月)384ページ
第6巻[175条~179条](1967年1月)417ページ
第7巻[180条~294条](1968年12月)655ページ
第8巻[295条~368条](1965年6月)391ページ
第9巻(増補最低版)[369条~398条の22](1982年1月)598ページ
  第9巻[369条~398条](1965年3月)403ページ
  第9巻別冊[根抵当法](1972年7月)77ページ
第10巻[399条~426条](1987年5月)906ページ
第11巻[427条~473条](1965年11月)500ページ
第12巻[474条~520条](1970年4月)521ページ
第13巻[521条~548条](1966年9月)446ページ
第14巻[549条~586条](1966年6月)347ページ
第15巻[587条~622条](1966年3月)591ページ
第16巻[623条~666条](1967年6月)325ページ
第17巻[667条~696条](1969年12月)600ページ
第18巻[697条~708条](1976年12月)740ページ
第19巻[709条~724条](1965年9月)471ページ
第20巻[725条~762条](1966年11月)426ページ
第21巻[763条~771条](1966年1月)316ページ
第22巻Ⅰ[772条~791条](1971年4月)411ページ
第22巻Ⅱ[792条~817条](1972年11月)468ページ
第23巻[818条~881条](1969年8月)435ページ
第24巻[882条~895条](1967年3月)280ページ
第25巻[896条~959条](1970年11月)643ページ
第26巻[960条~1044条,附則](1973年8月)439ページ

刊行開始から完結まで

はじめの第1巻が刊行されたのが1964年1月
さいごの第10巻が刊行されたのが1987年5月

完結まで23年4か月もかかっていますね……

総ページ数

12731ページ(27冊合計)

さすがに全26巻構成ですと圧巻のページ数ですね。

特徴

各条文,各項目の冒頭に参考文献のリストが掲げられています。
ネット検索もない時代ですから,この膨大な参考文献リストだけでも相当な価値があったのではないかと思われます。

新版注釈民法の概要

編集代表

谷口知平,於保不二雄,川島武宜,林良平,加藤一郎,幾代通

巻数,全巻構成

28巻全29冊の予定だった
※補訂版,改訂版等は1冊とカウントしています。

巻の構成は基本的には前身の注釈民法を引き継いでいます
巻数が異なるのは,注釈民法19巻を新版注釈民法では19巻と20巻に分割し,また,注釈民法22巻Ⅰと22巻Ⅱとなっていたものを新版注釈民法では巻の表記を通し番号にしたためです。
実質的な違いは,前者すなわち注釈民法19巻を2分割したことのみです。

第1巻(改訂版)[1条~32条ノ2](1条~32条の2)528ページ
  第1巻[1条~32条ノ2](1988年6月)442ページ
第2巻[33条~89条](1991年5月)694ページ
第3巻[90条~98条](2003年10月)616ページ
第4巻[99条~137条](2015年6月)888ページ
第5巻[138条~174条] ※未完
第6巻(補訂版)[175条~179条](2009年9月)840ページ
  第6巻[175条~179条](1997年9月)746ページ
第7巻[180条~294条](2007年9月)1030ページ
第8巻[295条~368条] ※未完
第9巻(改訂版)[369条~398条の22](2015年9月)800ページ
  第9巻[369条~388条ノ22](1998年12月)970ページ
第10巻1[399条~414条](2003年7月)628ページ
第10巻2[415条~426条](2011年12月)1014ページ
第11巻[427条~473条] ※未完
第12巻[474条~520条] ※未完
第13巻(補訂版)[521条~548条](2006年12月)958ページ
  第13巻[521条~548条](1996年8月)796ページ
第14巻[549条~586条](1993年3月)496ページ
第15巻(増補版)[587条~622条(借地借家法含む)](1996年10月)1074ページ
  第15巻[587条~622条](1989年4月)876ページ
  第15巻別冊[借地借家法](1993年10月)190ページ
第16巻[623条~666条](1989年9月)470ページ
第17巻[667条~696条](1993年2月)522ページ
第18巻[697条~708条](1991年9月)790ページ
第19巻[709条] ※未完
第20巻[710条~724条] ※未完
第21巻[725条~762条](1989年12月)502ページ
第22巻[763条~771条](2008年12月)466ページ
第23巻[772条~791条](2004年12月)690ページ
第24巻[792条~817条の11](1994年11月)688ページ
第25巻(改訂版)[818条~881条](2004年12月)872ページ
  第25巻[818条~881条](1994年3月)614ページ
第26巻[882条~895条](1992年6月)384ページ
  第27巻(補訂版)[896条~959条](2013年12月)860ページ
第27巻[896条~959条](1989年8月)802ページ
  第28巻(補訂版)[960条~1044条](2002年10月)618ページ
第28巻[960条~1044条](1988年9月)584ページ

刊行開始から完結まで

未完結です
最後の刊行となった『新版注釈民法第15巻(改訂版)』の巻末に次の記載がありました。

 『新版 注釈民法』の刊行は,諸事情により,本巻(第9巻改訂版)をもって最終とさせていただきます。
 完結を待望されていた読者の皆様には大変申し訳なく存じますが,ご了承のほど何卒よろしくお願い申し上げます。
  2015(平成27)年9月
  株式会社有斐閣

刊行中止,未完となったのは新版注釈民法第5巻(138条~174条),第8巻 (295条~368条),第11巻(427条~473条),第12巻(474条~520条),第19巻(709条),第20巻(710条~724条)の6巻分ですね。

大きな改正として平成29年民法改正(債権法改正)もありましたし,また,はじめに1巻が刊行されたのは1988年ですから,最後に刊行された9巻改訂版が出るまでに25年以上経ってしまっています

「諸事情」の中身まではわかりませんが,刊行中止もやむなし,といった感じなのでしょうか。読者としては完結してほしかったのですが,債権法改正の影響は大きかったのではないかと勝手に想像しています。

総ページ数

17555ページ(23冊分)
※補訂版・改訂版がある巻は,そちらのページ数をカウントしました。

新注釈民法の概要

編集代表

大村敦志,道垣内弘人,山本敬三

巻数,全巻構成

全20巻予定

刊行開始から完結まで

現在,刊行中です

第1冊目の15巻が2017年2月に刊行されています。

2020年10月現在,7巻分が刊行されています。

大体3分の1ですね。
読者としては,早期に完結することを期待します。
債権法改正や相続法改正など,民法にも大きな改正もありましたから,早く新しい注釈書が刊行されてほしいです。

第1巻[1条~89条](2018年11月)892ページ
第2巻[90条~98条の2]
第3巻[99条~174条]
第4巻[175条~179条]
第5巻[180条~294条](2020年12月)854ページ New!
第6巻[295条~372条](2019年4月)836ページ
第7巻[373条~398条の2](2019年11月)674ページ
第8巻[399条~422条の2]
第9巻[423条~465条の10]
第10巻[466条~520条の20]
第11巻[521条~548条の4]
第12巻[549条~586条]
第13巻[587条~622条の2]
第14巻[623条~696条](2018年10月)712ページ
第15巻[697条~711条](2017年2月)984ページ
第16巻[712条~724条の2]
第17巻[725条~791条](2017年10月)804ページ
第18巻[792条~881条]
第19巻[882条~959条](2019年10月)776ページ
第20巻[960条~1050条]

新注釈民法第5巻がまもなく発売になるようです! →発売になりました(2020年12月)
新注釈民法(5)物権(2)第180条~第294条』(小粥太郎編 大村敦志・道垣内弘人・山本敬三編集代表)(2020年12月発売)

総ページ数

6532ページ(8巻分:2020年12月現在刊行分)

特徴

全20巻構成となっており,注釈民法,新注釈民法と比べて巻数が減っています

最も大幅に変わった分野としては,親族・相続分野(家族法分野)でしょうか。
注釈民法新版注釈民法では8巻分あったのですが,新注釈民法では4巻分になっています。
1巻ごとのページ数も異なりますので単純比較はできませんが,やはりやや少ない印象ですね。
とはいえ,最初の注釈民法が出た当時は親族・相続分野は日本国憲法の施行に伴い,家制度の廃止,男女同権などの対応で,まったく新しい法制に改正されたという事情があり,この分野の注釈の需要が高かったのかもしれません。

また,注釈民法の刊行より前に中川善之助編集代表『註釈親族法(上・下)』(有斐閣,1950年),同『註釈相続法(上・下)』(有斐閣,1954年)という注釈書があったそうです(新注釈民法の巻頭にある「『新注釈民法の』刊行にあたって」の序文にその旨の紹介があります)。
これらの影響があって,注釈民法新版注釈民法の親族・相続分野の巻数が多かったのかもしれませんね。

本記事で紹介した書籍